ブーランジュ5人の達人が結集! 東日本大震災復興支援チャリティー製パン講習会

2012年3月13日、東日本大震災で被災された方々及びその地域の復興を支援するチャリティー製パン講習会が、日清製粉株式会社小網町加工技術センターにおいて、山﨑豊さん(元ジェラール・ミュロ)、伊原靖友さん(パン焼き小屋ツオップ)、井上克哉さん(ブーランジェリー オーヴェルニュ)、長岩崇之さん(同)、金長暢之さん(ベッカライ・ヒンメル)の5人の達人が結集、賑やかに開催された。

チャリティを主宰した山崎豊氏

発起人は山﨑豊シェフ。大震災の晩、東京駅で一夜を明かしながら自分にできることは何かと考えて、チャリティー講習会を計画した。メーカーや知り合いのシェフに声をかけ、多くの賛同者を集めた。初回は計画停電が心配される中で2011年8月末に実現し、受講料35万5000円全額が日本赤十字社を通じて被災地へ寄付された。この講習会はコンテスト入賞実績を持つシェフや人気店のオーナーシェフらの技術を間近に見られるとあって、多くの受講者で賑わった。受講料47万円が義援金として活用される。

製パンとそれに関する材料の協賛は、オリエンタル酵母工業、キリン協和フーズ、寿物産、サンエイト貿易、大山ハム、タカナシ乳業、ドーバー洋酒販売、富澤商店、日清製粉、フレッシュフードサービス、ルーツ貿易(50音順)。

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オーベルニュ井上シェフ&長岩シェフ

オーベルニュの井上シェフ
オーベルニュの長岩シェフ

葛飾の人気店、ブーランジュリー オーヴェルニュのオーナーシェフ、井上克哉さんは、来年イタリアでパンの国際競技大会に出場予定ということもあり、いま一番力を注いでいるイタリア風のパンを実演。「パンドーロ」、小型版の「パンドリーノ」、「フォカッチャ」、「フガス」を紹介した。同店チーフの長岩崇之さんは自身の好きな「ツオップ」を実演した。

パンドーロ手前の小さいのがパンドリーノ
フォカッチャ

パンドーロは「黄金のパン」の意。パネットーネと並ぶハレの日のパンだ。イタリアの粉に近づけて開発された小麦粉「ルスティカ」を使用。発酵を遅らせ熟成を進めるよう、固めのビガ種(前発酵種)で発酵をとる。「フォカッチャ」「フガス」も「ルスティカ」を使用。フォカッチャはある程度の厚みをもたせ、フガスはドライトマト、バジル、オリーブを入れて均等に薄く伸ばし、同じ生地でも見た目や食感の違いを楽しませるパン作りを提案した。

形も楽しいフガス
フガス
ツオップ

長岩さんは「ツオップ」を紹介したが、網目をきれいに出すコツは、ホイロから早めに出し、卵を塗ってから、冷蔵して生地をしめること。表面を固めて焼くと美しい仕上がりになるという。長岩さんのあざやかな編み込みに会場は釘づけとなった。

ツオップを編み込む

ツオップ伊原シェフ

ツオップの伊原シェフ

松戸の人気店、パン焼き小屋ツオップの伊原靖友さんの実演は「ごまの角パン」と「蓮根パン」。「ごまの角パン」はりんごジュース100%に生イースト0.5%を28℃で12時間発酵させた液種を使う。酵母の増殖(培養)には適した温度と餌の元となる糖、そして酸素が必要なので、金魚に酸素を送るエアポンプを使用するというのがユニーク。自家製の酵母とは呼べないが、培養基が違うと味もフレーバーも変わり、果実酵母とは違った面白さがあるようだ。

蓮根パン」は蓮根と牛挽肉を七味唐辛子を隠し味にしょうゆで炒め、ライ麦の生地に練り込んだ人気商品として提案した。

ごまの角パン
蓮根パン
 

ベッカライ・ヒンメル金長シェフ

ヒンメル金長シェフ

大岡山の人気店、ベッカライ・ヒンメルの金長暢之さんはドイツの発酵菓子のイースト生地、ヘーフェタイクでブルーポピーシードを使ったモーンクーヘンベリーのシュトロイゼルクーヘン、リンゴのアプフェルクーヘンを紹介した。

リンゴのアプフェルクーヘン
モーンクーヘン
ベリーのシュトロイゼルクーヘン


山﨑豊 氏(元ジェラール・ミュロ)

山崎豊さん

大阪のブルディガラ、福岡のジェラール・ミュロのシェフ・ブーランジェを経て、さまざまな現場で技術指導、商品開発に数多く携わってきた山﨑豊さんは焼き菓子「ショコラアマンド」「ビスコッティ」を実演。その他「アプフェルクーヘン」「バウムクーヘンケーキ」などドイツ菓子を試食とともに紹介した。

ショコラアマンド
ビスコッティ
山崎氏アプフェルクーヘン

山﨑さんの商品開発の話が興味深い。「どういうパンを作りたいか考えてから粉を決めて、砂糖、塩、バター、卵などを頭の中でミキシングして、発酵させて焼いて、食べてみておいしければ実行に移す。シュミレーションは1分でできる。そのためには、粉のサンプルテストのデータや、食べたものの味わいを自分なりに分析して頭に入れておくことが大切」
 「レシピの数字はただの数字で、たとえそれが同じでも、人によって作り方も仕上がりもまったく違う。どういう気持ちでそれを作りたいと思ったかを理解すると、それはただの数字ではなくなる。レシピで重要なのは数字ではなく、数字に含まれる想いを感じとること。わからなければなんで?なんで?と子供のように繰り返し聞いて、自分のものにしていってほしい」

朝10時~夕方までの時間であったが、ランチタイムには各人得意のパンと大山ハムを使った『パンを楽しむランチボックス』が用意された。パンと具材の味わいは勿論、ボリューム満点と大好評であった。

山崎氏のバウムクーヘンケーキ
パンを楽しむランチボックスは大好評
ランチに提供された山崎氏のブリオッシュ
集まった講師も楽しそう
左 ヒンメル金長氏、中央 オーベルニュ長岩氏、右 オーベルニュ井上氏 )

山崎さんの想いに賛同し、人気ブーランジェ4人が結集した今回の講習会、受講者からは次々と質問が飛び、会場は熱気に包まれた。次回は7月に開催予定という山崎さん。チャリティ講習会への熱い想いは途切れることはなさそうだ。


今回ご紹介したアイテム
山﨑シェフ
ショコラアマンド(1kg仕込み) ビスコッティー(1kg仕込み)
井上シェフ
パン・ドリーノ フォカッチャ ツオップ
伊原シェフ
ごまの角パン(2kg仕込み) 蓮根パン(4kg仕込み)
金長シェフ
モーンクーヘン 果実のシュトロイゼルクーヘン アプフェルクーヘン


協賛企業名(50音順)
オリエンタル酵母工業(株) / キリン協和フーズ(株) / 寿物産(株) / サンエイト貿易(株) / 大山ハム株式会社 / タカナシ乳業(株) / ドーバー洋酒販売(株) / (株)富澤商店 / 日清製粉(株) / 日仏商事(株) / フレッシュフードサービス(株) / ルーツ貿易(株)