
専門店が次々と登場し、ドーナツは相変わらず人気の高いアイテムです。今回は「韓国発」「フレンチクルーラー専門」「カフェブランド発」のドーナツ店を取材しました。お店ならではの魅せ方や、生地づくり、合わせる素材の選び方など各店こだわりのドーナツをご紹介します。
BONTEMPS 中目黒店
(ボンタン)
「BONTENPS」は、ソウルの蚕室(チャムシル)に本店を構える韓国ドーナツが人気のカフェブランド。日本では2店目となる同店は、ゆったりと開放的なカフェスペースを併設し、ドーナツは常時15種類に季節限定を加えたバリエーションを揃えています。
BONTEMPS 中目黒店 (ボンタン)
- 住所
- 東京都目黒区青葉台1-28-7
- 電話
- 03-6452-3600
- 営業時間
- 10:00 ~22:00(LO 21:30) ※売り切れ次第閉店
- 定休日
- 不定休

韓国伝統のドーナツ「クァベギ」を現代風にアレンジ


中目黒駅から山手通りを北に歩いて7分ほど、白を基調にしたお店は、内外に鏡を多用して、都会的なカフェの佇まいです。
店内のショーケースには、さまざまなグレーズやトッピングを施したバリエーション多彩なドーナツが並んでいます。スタッフの小泉美羽さんにお話を伺いました。
「当店のドーナツは、韓国の伝統的な揚げ菓子『クァベギ』を現代的にアレンジしています。クァベギは「ひねる」という意味の韓国語で、ねじって揚げた韓国のツイストドーナツです。
もともとは、もち米粉、米粉を使ったもちもち食感が特徴のドーナツに砂糖を振りかけただけのシンプルなものが屋台などで売られていました」(小泉さん)。
パッと目を引く華やかさとかわいいビジュアルは、韓国スイーツの大きな魅力ですが、生地づくりからクリーム、トッピングなども多くは店内キッチンで素材から丁寧につくっているそう。
「クァベギ本来の魅力を残しつつも、今の時代に合ったおいしさとトレンディなビジュアルを追求しています。ドーナツ生地の甘みはごくごく控えめにして、甘いものだけでなく、甘じょっぱい系や、『トマトバジル』のように甘くない惣菜系と、いろいろなテイストをお楽しみいただけます」(小泉さん)。


基本のドーナツは、ふわふわともちもちの中間くらい。揚げた表面はサクッとして、中は程よい引きがあり、しっとりした食感が特長です。
「生地の仕込みは朝6時からスタート。小麦全粒粉から起こしたルヴァン種やポテトフレークを加えて、当店ならではの風味や食感をつくっています。グレーズやクリームなどもアイテムごとにフレーバーの素材と生クリームなどを合わせて、自分たちで手づくりしたもの。当日つくったものをその日のうちに使いきりにしています」(小泉さん)。

「コーンクリーム」は、茹でとうもろこしの表面をバーナーで炙り、削り取ったものをトッピング。クリームにもコーンのパウダー入りで、スイートコーンのスープのような甘みを楽しめます。
惣菜系の「バジルトマト」は、バジル風味のクリームをたっぷり絞った上に、ドライトマトのオイル付けをトッピングした人気アイテムです。
「韓国らしさ」を演出する素材づかいも魅力
グレーズやクリーム、トッピングに使う素材は、韓国から取り寄せたものや、韓国スイーツでおなじみのものを使用して、オリジナルのテイストをつくっています。
「ブラウンチーズシナモン」のトップにあしらったブラウンチーズもその1つ。ブラウンチーズとは、乳清を茶色く色づくまで煮詰めて生クリームなどを加えて固めたもの。甘さ控えめのキャラメルのような風味があります。
角切りバターをゴロンと載せた「ソルティッドキャラメル」は、韓国から取り寄せたキャラメルを煮溶かして生クリームや岩塩と合わせたグレーズをたっぷり。
「韓国のキャラメルは、塩と合わせたときに絶妙においしくなるんです!」と小泉さん。


取材時(11月)の季節限定は、紫芋と金時芋、2色のサツマイモを使った「コグマクリーム」がイートイン限定で登場していました。「コグマ」とは韓国語で「さつまいも」のこと。細長いツイストドーナツに2色のお芋のストライプが鮮やかに映えます。
そして、カラフルな色遣いとポップなイラストが可愛いパッケージも、韓国スイーツには欠かせないアイテム。4個・6個用のサイズがあり、手土産にもぴったりです。
「当店は、つくりたてのドーナツ各種のほか、ドリンクメニューには韓国版の黒ゴマきなこのような『ミスカル』などもあります。気軽に立ち寄ってドーナツ&ドリンクで一息ついたり、気分の上がるパッケージでテイクアウトしたり。韓国発のドーナツをぜひ楽しんでくださいね」(小泉さん)。


FRECKLE donuts 代々木公園店
(フレクル ドーナツ)
2024年7月オープンのフレンチクルーラー専門店。国産の小麦と卵にこだわったフレンチクルーラーをテイクアウトで楽しめます。定番6種のバリエーションに加えて期間限定メニューも随時登場しています。
FRECKLE donuts 代々木公園店(フレクル ドーナツ)
- 住所
- 東京都渋谷区富ケ谷1-51-6
- 電話
- 非公開
- 営業時間
- 10:30~19:00 ※売り切れ次第閉店
- 定休日
- なし

産地とのつながり×パティシエの技でつくるフレンチクルーラー


フレンチクルーラーは、ケーキドーナツともイーストドーナツとも違う、シュー生地をリング状に絞り出して揚げたドーナツです。フレンチクルーラーに特化した同店のシェフパティシエ西山生恵さんにお話しを伺いました。
「当店の親会社はビストロなど飲食店を手がけていて、私は系列店で出すスイーツの監修をしていました。新たにドーナツのテイクアウト店を立ち上げるにあたって、ほかのドーナツ店との差別化を考えていたとき、パッと思い浮かんだのが大好きなフレンチクルーラー。今、生ドーナツ系のお店は増えていますが、フレンチクルーラーだけを専門にする店はほとんどないですし、軽やかな食感とかわいいビジュアルで女子受けするアイテム。そこから、うちにしかつくれないフレンチクルーラーの開発がはじまりました」(西山さん)。
生産者の情熱と愛情が注がれた素材のおいしさを、料理を通して皆さんに伝える、というのが系列ビストロのこだわり。産地とのつながりもあります。そのコンセプトはドーナツ業態にも引き継がれています。生産者が心を込めてつくる国産素材と職人の技をかけあわせてつくる「日本発のフレンチクルーラー」が同店のテーマです。

「農家の方が大切に育てた北海道産小麦の香りと神奈川県の卵のうま味を最大限に生かし、パティシエの発想力と技術を駆使して、何度でも食べたくなるフレンチクルーラー(フレクル)をつくり上げました」(西山さん)。
生地には全粒粉と小麦粉を使用。独自の配合で、もちっとしながらも軽いフレクル生地が生まれました。店名のFRECKLEは「そばかす」の意味。フレクルの生地にも全粒粉のブランや胚芽の粒々がそばかすのように散らばり、芳ばしい風味と食感を生んでいます。
「『フレクルドーナツ』は、これぞフレンチクルーラーの完成形。シンプルに小麦と卵のおいしさにグレーズとナッツで甘さと香りを加えた当店看板メニューです」(西山さん)。
定番のフレクルはこのほか、シンプルにシュガーをまぶした「プレーン」、「煎茶」、中にクリームをサンドした「カスタード」「チョコレートクリーム」「キャラメルエピス」の6種類。
「キャラメルエピス」は、シナモン、クローブ、ナツメッグに辛みスパイス(ジンジャー、ブラックペッパー)をブレンドしたスパイスミックス「クォーターエピス」を練り込んだ生地にキャラメルカスタードをサンド。トッピングのクランブルクッキーは自家製の「スペキュロス(クォーターエピス+カルダモン入りのスパイスクッキー)です。


素材のおいしさが伝わるドーナツづくりを目指しています

「煎茶」には、静岡県杉本園の「深蒸し煎茶」の茶葉を使用しています。
「近年は海外からの観光客の方にも高級煎茶が抹茶をしのぐ人気となっています。繊細な煎茶は、卵、小麦のパンチが効いたドーナツにあわせると負けてしまいがちなのですが、無農薬栽培のこの煎茶は、自然に育った茶の樹みたいなワイルドさがあります。茶葉をパウダー状にして、生地にもグレーズにも練り込み、トッピングのナッツにも煎茶パウダーをまとわせています。抹茶のように1口食べただけでお茶の風味がしっかりと主張してくるという感じではありませんが、ほどよい風味と苦みで煎茶を飲んだときのようなスッキリとすがすがしいテイストが特長。余韻を楽しんでいただけるドーナツです」(西山さん)。
期間限定メニューでは、一般にあまり知られていないけれど、皆さんにぜひ食べてみてほしい、という果物や野菜を積極的に使っています。
取材時の限定ドーナツは「ハスカップ」と「シーベリー」。どちらも北海道産のベリーをジャムにしてドーナツにサンド。「ハスカップ」にはホワイトチョコのグレーズにピスタチオをトッピング、「シーベリー」にはヨーグルトのグレーズを合わせ、グラノーラでカリカリの食感をプラスしています。
「ハスカップはお客様には“酸味の強いブルーベリー”とご説明しています。シーベリーはベリーらしい酸味と甘みにほんのりとした渋みも感じる味わい。ジャムにして甘いドーナツと一緒に味わうと、そのバランスは素晴らしく、素材のおいしさにも気づいてもらいやすい。合わせる素材はごく身近なものにして、『シーベリー?知らないけれど、どんなのだろう?食べてみたいな!』と思っていただけるようにレシピを組立てています」(西山さん)。



素材づかいと、甘いだけじゃない、酸味、苦みなどもどう組み合わせて奥の深いおいしさをつくるかは、西山さんがビストロ業態で培ってきた強みです。
「どなたにも食べやすくて、新しいおいしさも発見していただけるように、素材のおいしさがきちんと伝わるフレクルをつくっていきたいです。定番品も限定品も、すべてフレクルではありますが、実はそれぞれに大きな違いがあります。ぜひ、全種類をお試しいただきたいです」(西山さん)。
UNI DONUTS 麻布十番店 (ユニドーナツ)
横浜で創業した『UNI COFFEE ROASTERY』が手がける2024年10月オープンの生ドーナツ専門店。ドーナツ業態は2023年12月にスタートし、全国に17店舗のほかバンコクに店舗を展開しています。
UNI DONUTS 麻布十番店 (ユニドーナツ)
- 住所
- 東京都港区麻布十番2-3-2 TRUNK麻布十番1-2F
- 電話
- 050-3159-6281
- 営業時間
- 11:00~17:00 ※売り切れ次第閉店
- 定休日
- 不定休

カボチャを練り込んだとろける「生食感」の生ドーナツ


同店では10種類の生ドーナツをテイクアウト専門で提供しています。店舗2階に工房があり、近隣店舗で販売する分も含めて製造の拠点となっています。ロースタリーカフェ発の生ドーナツについて店長の福井萌恵さんにお話を伺いました。
「ロースタリーカフェとして環境問題やフードロス解消のためにはどんなことができるかを考えていく中で、『規格外』のかぼちゃをなんとか有効活用できないか!ということが新しいスイーツ開発の出発点になりました。品質や味には何の問題もないにもかかわらず、通常は市場に流通せずに廃棄されてしまう、規格外のカボチャを活かしたのが当店オリジナルの生ドーナツです」(福井さん)。

当初は、UNI COFFEE ROASTERYのカフェスイーツの1つとして提供をはじめたところ、予想以上に好評で、生ドーナツに特化した専門店としてブランド化することになったそう。
バターや卵もたっぷり使ったリッチでとろけるような口どけの生地に、いろいろなフレーバーのクリーム、というのが生ドーナツの魅力です。
「当店のカボチャを練り込んだドーナツ生地は、口の中でとろける、しっとり、ふんわりとした『生食感』が特長です。パティシエたちが試行錯誤を重ね、 完璧なバランスを見つけ出し、ようやく目指す食感とおいしさを完成させました」(福井さん)。
生のまるごとのカボチャの皮をむき、ほどよいサイズにカットして柔らかく蒸してから生地に練り込みます。
「使用するかぼちゃはその時々で大きさも水分量も異なるので、ゆるすぎると成形が難しくなったり、発酵したときに形が崩れたりすることも。その時の素材の状態に合わせて牛乳などの水分量を加減し、発酵を見極めて、常に安定したおいしさを提供できるようにしています」(福井さん)。
カボチャそのものの甘みや味わいが引き立つように砂糖の甘さは控えめ。
「砂糖の量は揚げたときの色づきにもかかわってくるので、とても大切です。また、揚げる際は、最初に高温で表面をカリッと揚げることでコロンと丸い形をキープ。中はふんわりと口どける生食感になるように揚げています」(福井さん)。


4種類のフレーバーが加わりラインアップがさらに充実
ラインアップはオープン当初からの定番に新しいフレーバーを加えた10種類。生地そのもののおいしさを楽しめる「UNIドーナツ(プレーン)」「シナモンシュガー」以外は、クリームをたっぷりと詰めています。一番人気は「カスタード」。毎日たくさんつくっていますが、真っ先に売り切れることも多いそう。
大切にしているのが生地とクリームのバランスです。
「クリーム入りの全種類に共通しているのは、カボチャを使用した生地の素材感を活かせるクリームに仕立てているところです。生地と一緒に口どけて、おやつに1個だけじゃなく、もう1つ食べたくなるような、重くなりすぎない配合を考えてつくっています」(福井さん)。
「ホイップ」は口当たり軽やかな生クリームを使用。「カスタード」は、カスタードクリームとホイップクリームをブレンドして、もったりしすぎないさらっとした口どけ。「いちご」は、クリームにいちごムースを加えてショートケーキ以上のいちご感を楽しめます。抹茶ドーナツは、生クリームに甘みのない抹茶のムースをブレンドして、甘さはごく控えめで抹茶の香りを生かしたテイストに。甘いものが苦手な方にも楽しんでいただけるフレーバーです。


最近新しく加わったのが、「ピスタチオ」「塩キャラメル」「シナモンシュガー」「ブルーベリーホイップ」の4種類。他店舗での限定商品だったフレーバーを定番化させたそう。ピスタチオのナッツ風味が際立つ「ピスタチオ」のクリームは、マスカルポーネと生クリームをブレンド、「ブルーベリーホイップ」は、ブルーベリージャムとホイップクリームの軽やかなクリームをたっぷり詰めています。
同店のドーナツは、購入後3時間以内に食べていただくのを推奨していますが、ラップで密閉すれば冷凍保存も可能です。
「オープンから2カ月近くたち、リピートしてくださるお客様も増えてきました。これからも、お客様からご要望の多いフレーバーや、ドーナツに合わせるなんて予想もつかない素材も含めて、いろいろなフレーバーを展開していきたいと考えています。そして、全国にユニドーナツの店舗を増やしていく予定ですので、お近くにいらしたときはぜひお立ち寄りください」(福井さん)。


韓国スイーツならではのビジュアルと素材づかい、国産素材を活かすフレンチクルーラー、規格外のかぼちゃを有効活用した生ドーナツと、それぞれのお店のこだわりが、ドーナツの新しい魅力を生んでいます。皆様のお店でも参考にしてみてはいかがでしょうか。
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2024年11月)のものです。最新の店舗情報は、別途店舗のHP等でご確認ください。