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スタイルいろいろ!朝ラーメン

数年前から、ブームの兆しを見せる「朝ラーメン」。しかし、一言で朝ラーメンと言っても、朝と昼で提供するラーメンが異なる二毛作営業や、飲んだあとの〆から朝までの昼夜逆転営業のお店、ご当地の朝ラー文化を伝えるお店など、そのスタイルは様々。今回は、都内で朝ラーメンを提供している3店舗に取材。こだわりや工夫についてお話を伺いました。

しょっつる塩ラーメンSHIBATA

東京メトロ丸の内線・淡路町駅から徒歩3分。行列の絶えない人気店「塩生姜らー麺専門店 MANNISH」の朝ラーメン業態が、「しょっつる塩ラーメンSHIBATA」です。取材日は小雨でしたが客足が途絶えることはなく、店内には常に朝ラーメンを楽しむ方がいました。

しょっつる塩ラーメンSHIBATA

住所
東京都千代田区神田司町2-2-8
営業時間
7:00~9:00
定休日
土曜日、日曜日、祝日
ガラス張りで、オシャレな印象。生姜の黄色がアクセントに

寒い冬は朝ラーメンで温まってほしい

しょっつる塩らー麵+豚チャー3枚 850円(税込)

食べログTOP5000入りで、この3月にはオープン8周年を迎える「塩生姜らー麺専門店 MANNISH」。そんな人気店が、なぜ「しょっつる塩ラーメンSHIBATA」として朝ラーメンをはじめることとなったのか。代表の柴田和さんにお聞きしました。

MANNISH代表 柴田和さん

「コロナ禍の時に、生姜以外にもお店を作って『MANNISH』を盛り上げようと思い、『昆布』や『コッテリ』をコンセプトにした塩らー麺専門店をオープンさせたんです。規模が大きくなってきて経営に集中していたのですが、コロナが五類に移行したので改めて体制を見直そうと思いまして。この本店で現場に立って、また仕込みをするようになったのをきっかけに朝ラーメンをはじめました。
冬の朝はとても冷えるので、お仕事前のお客様にラーメンを食べて温まっていただきたいです。朝ラーメンは気候がよくなって来店するお客様が少なくなったら一旦やめて、来年の冬にまたやれたらと考えています」

10杯食べると1杯無料になる、くすりと笑える内容のポイントカード。常連客が多く、カードの累積枚数が「50枚以上」というお客様が70~80人はいるという。

お店のある淡路町・神田エリアはサラリーマンのお客様が多く、出社前に来店する方が8割ほどだそうです。その他、「夜勤」のあるIT系やビルのメンテナンス系の会社にお勤めで、仕事終わりの一杯として食べに来る方もいるんだとか。周辺に「朝蕎麦」を提供する店はあるものの、「朝ラーメン」の店はないこともありお客様の評判も上々。

また、柴田さん自ら現場に立つことでスープの改良が今まで以上に捗るそうで、昨年11月の朝ラーメン開始から、スープの味を3回以上変えているそう。ただ、これまでの味を気に入っていたお客様が違和感を感じないよう「気付かない範囲で、少しずつ味を改良するのがポイント」とのこと。常連さんが多いお店ならではの気遣い溢れる味づくりです。

毎日煮干しの配合が変わる『しょっつる』を効かせた一杯

朝ラーメンとして提供しているのは、「しょっつる塩らー麺」と「塩生姜らー麺」の二種類。朝限定の「しょっつる塩らー麺」のスープは、サンマ、アジ、イワシの煮干し出汁に、特製塩だれ、「しょっつる」を合わせています。しょっつるは「ハタハタ」を使った魚醤で、ラーメン店を営んでいた柴田さんの父親の故郷である秋田の味。仕上げに使うことで、ふわっと香るアクセントになっています。
スープのもう一つの特長が、サンマ節。使用しているお店はまだそう多くないため、サンマ節を配合することで味の特長を出しているとのこと。この日の煮干しの割合は「サンマ4:アジ1:イワシ1」。煮干しの配合はよりおいしくなるよう毎日変えており、「しょっつる塩ラーメンSHIBATA」のX(旧Twitter)で確認もできます。

加水率の高さが特長の三河屋製麺オリジナル細麺
注文すると、撮影用に瓶を出してくれるサービスが心憎い

トッピングは、ピンク色が美しい「豚チャー3枚(850円)」。豚肩ロースが使われていますが、低温調理で作られているので脂のしつこさは全く感じず、しっとりジューシーな味わいです。薄めにカットされており麺と一緒に口に運びやすく、朝でもスッと食べられます。トッピングはその他「玉ねぎ薬味のみ(600円)」も選ぶことができます。

3種の煮干しを配合 (左)サンマ/(中央)アジ/(右)イワシ
朝の光が差し込む明るい店内

香り高い希少な「アロマ生姜」がたっぷり

もうひとつの朝ラーメン「塩生姜らー麵」は、昼営業でも提供されているMANNISHの看板メニューです。ランチタイムの混雑を避けて、あえて朝狙いで食べに来るお客様もいるそう。

「生姜は、熊本県産の希少な『きな生姜』を使っています。香り高く、苦みが弱いのが特長で『アロマ生姜』とも呼ばれているんです。はじめて口にした一週間後に、農家さんに直接会いに熊本に行ってしまうくらい気に入っています。僕の奥さんは、よくそのまま食べていますし、秋田のおばあちゃんが何にでも『しょっつる』をかけていたように、奥さんは『きな生姜』を何にでも入れています」

塩生姜らー麺に使用されている「きな生姜」は5グラム。数字だけ聞くとそう多くないように思えますが、スープをよく見ると粗削りされた生姜がたっぷり。箸で丼の底からかき混ぜるとさらに生姜が現れ、ぶわっと爽やかな香りが漂います。

「生姜は皮と実の間にいちばん栄養があり、香りも立つので丸ごと削って使っています。食べているとだんだん生姜の味に慣れてきてしまうので、そんな時は卓上にある『生姜酢』を入れると、さらに生姜の味を楽しめます」

鶏清湯スープと塩ダレにきな生姜を合わせたスープは、食べ進めるうちに、どんどん体がポカポカしてきて、朝の冷えた体にぴったりです。

塩生姜らー麵+玉ねぎトッピング 600円(税込)
「生姜酢」の生姜が顔型に切り取られていて、柴田さんの遊び心を感じる

麺匠 さざ波

JR蒲田駅西口より徒歩3分、2023年10月にオープンした「麺匠 さざ波」。「東京23区で最も居酒屋が多い」とも言われる蒲田は、ラーメン店も多く軒を連ねます。そんなラーメン激戦区だからこそ、昼夜逆転営業を行うことで他店と差別化を図り、新店ながら人の絶えない人気店に。飲んだあとの〆から、深夜営業を終えた方の遅い夕飯、出社前の朝ラーまで、蒲田の人々の胃袋を掴んでいます。

麺匠 さざ波

住所
東京都大田区西蒲田7-6-9 高橋ビル 1F
電話
03-6424-8838
営業時間
【平日】22:00~7:00(L.O.6:30)
【週末】22:00~9:00(L.O.8:30)
定休日
日曜、第2・第4月曜日
店名の「さざ波」をイメージしたネオンが輝く

飲みの〆としてはもちろん、朝もスッキリ食べやすい『塩』

店名ロゴのついた特製海苔が目を引く、澄み渡る“極”塩らぁめん(旨塩味玉トッピング) 1,050円+150円(税込)

新店ながら、既に半分以上のお客様が常連さんという「麺匠 さざ波」。ラーメン激戦区・蒲田にて、どんな戦略を考えて出店したのか。店長の小林諒さんにお話を伺いました。

店長の小林諒さん

「いつかラーメン屋を開きたいと思って7年ほど色々なラーメン屋で修行したあと、接客の経験も積みたいと思って蒲田にあるバーで働いていました。そこで、蒲田は飲み文化が盛んな割に、夜にラーメンが食べられるお店が少ないことに気が付きました。お客様からも夜から朝にかけてラーメンを食べたいという声をよくお聞きしたので、需要があると見込んで昼夜逆転営業をすることに決めました」 実はこの店があるのは、以前も4店舗ほどラーメン屋があった場所。そんな立地でまったくの新店が同じように昼営業をしていたら、ラーメン激戦区の中で埋もれてしまうと思ったのだそう。
「夜から朝までの営業はインパクトもあって覚えてもらいやすく、地元の方の需要ともフィットするのでお客様の反応は上々です。あとは、SNSでの拡散を狙って店名ロゴが入ったオリジナルの『特製海苔』を作りました。一枚60円もするんですが、お客様がハッシュタグなど付けなくても店名が目に入り宣伝になるので、その価値はあると思っています」

メニュー名通り「澄み渡る」塩スープは、れんげもクリア

麵匠 さざ波」のいちおしは、「澄み渡る“極”塩らぁめん」。蒲田にある深夜から朝にかけて食べられる他店のラーメンは「とんこつ」と「つけめん」のため、差別化のためにさっぱりとした「塩」にしたのだそう。また、塩ラーメンはシンプルで誤魔化しが効かないため「今まで色々なジャンルのお店で修行をさせてもらったからこそ、あえて塩ラーメンを看板商品にしてチャレンジしようと思いました」と、小林さんは語ります。
スープに使用している魚介は、鯛、ノドグロ、ぶり、アナゴを基本とし、さらに旬の魚がプラスされます。脂は動物性のものではなくオリーブオイルを用いることで、ヘルシーで胸焼けしない、飲んだ後でも罪悪感のない味に仕上がっています。出社前に来店するサラリーマンのお客様からも「朝でも塩なら食べやすい」と、喜ばれるそうです。

麺は、「豊華食品」の細麺。塩スープによく合い、夜も朝もスルスル食べられるとお客様から好評です。トッピングは、鶏つくね、三陸産ワカメ、メンマ、白髪ねぎ、針生姜、大葉、糸唐辛子。鶏つくねを口に入れやすいよう平べったく成形したり、メンマは細切りを選んで噛み切りやすくしたりと、「食べやすさ」にも工夫が施されています。蒲田で働く女性が仕事終わりに来店されることが多く、意識しているそう。来店されるお客様の男女比は「半々か、女性が少し多いくらい」だそうで、アメニティも充実しています。

8割以上のお客様が追加注文する、「旨塩味玉」は特製塩だれ味
入店してすぐの場所に設置されたアメニティコーナー。紙エプロンをはじめ、ヘアゴムやあぶらとりフィルム、メイク崩れを直すための綿棒と鏡まで用意されている

コンセプトは、ラーメン屋『なのに』

お客様とコミュニケーションが取りやすい、カウンター10席の店内

開店時間が22時なので、お酒の入った状態でご来店されるお客様も多い「麺匠 さざ波」。そこで、あえて券売機を置かずに営業しているそうです。その狙いを小林さんはこう説明します。

「券売機でいちいち食べたいメニューを探してボタンを押すのって、飲んでいるお客様からすると面倒ですよね。押すボタンを間違えちゃったりもしますし。なので、券売機は置かずにスタッフが直接注文を取る形にしています。実は、対面で注文をお聞きすることでオススメ商品を伝えたり、トッピングを勧めたりできるので売上アップにもつながるんです。ラーメン屋ですが『千円の壁』を超えて、客単価は1,800~2,000円くらいです」

この直接注文を上手く活用するため、アルバイトとして働くスタッフは、お笑い芸人の卵など、「愛嬌」を重視して採用したそう。

「お笑い芸人の子がいる時限定で『一発ギャク』というメニューをご用意しています(笑)。毎回違うネタを用意してくれて、店内も盛り上がるんですよ。平日は4~5発、週末になると10発はご注文があります。メニュー表のよく見ないと分からない場所に載せて、僕ら他のスタッフからお客様にお勧めしたり、コミュニケーションを取るきっかけにもなっています」

「アルコールメニューも、売りのひとつです。ラーメン屋はビールしか置いていないお店もありますが、「麺匠 さざ波」では店名を意識した『海』を感じるようなオシャレなラベルの『クラフト酎ハイ』、国ごとに仕入れて売り切れ御免にしている『ビールDE世界旅行』、二軒目や三軒目としてご来店された方も注文しやすい『アサヒ小瓶ビール』などをご用意しています。おつまみメニューも用意しているので、それを食べながら飲み、〆としてラーメンを召し上がる方もいらっしゃいます。
それと、お酒が入っているお客様が多いので、スタッフである僕らも『一杯』いただくことが多いんです。夜から朝まで営業している、うちの店ならではですよね。それならばと、スタッフがやりがいを持って楽しく働けるように、ラーメン屋ですがドリンクバックと売上に応じたインセンティブを用意しています。
「ラーメン屋だからこうだよね」というセオリーに沿うのではなく、ラーメン屋『なのに』お酒の種類が豊富で、店内も爽やかで、アメニティも充実していて、過ごしやすい。〆で深夜に食べても、朝ラーメンとして食べてもおいしい。そんなコンセプトで、唯一無二の店づくりを目指しています」

SNS映えするラベルをチョイスしている、クラフト酎ハイ
過去に『ビールDE世界旅行』で提供したビール

まる藤ラーメン 下北沢

静岡県の藤枝市には、早朝からラーメンを食べる「朝ラー」文化があります。福島県の喜多方などにも朝ラー文化はありますが、「温」と「冷」の二種類のラーメンをセットで食べるのが藤枝流。朝から食べても胃にもたれない、「元祖・志太系」と呼ばれる甘みを感じる魚系スープが特長です。
地元企業・フジエダ勝手にプロデュース株式会社(通称:フジカツ)が手掛ける「まる藤ラーメン」が、期間限定で下北沢に進出。2024年3月24日まで朝ラー営業を行いました。

まる藤ラーメン ※4月下旬に藤枝市にオープン予定

住所
静岡県藤枝市駅前1-7-8
※午後から夜は『cafe青いベンチ』として営業
営業時間
平日 6:00-13:00(L.O. 12:45)
土日祝 5:00-13:00(L.O. 12:45)
定休日
なし

※取材は、期間限定営業の「下北沢店」にて行いました。

藤枝でも使われている朝ラーメンの「のぼり」が目印

サブカルチャーの聖地に広がる、朝ラー文化

朝ラーメンセット(ハーフサイズ) 1,150円(税込)

古くからお茶の生産地として栄えていた藤枝市は、お茶取引などで早朝から仕事をはじめる人が多く、朝6時には仕事を終えていたそうです。そのあとの腹ごしらえに朝早くからラーメン店に行列ができ、見かねた店主が営業時間を早めたのが藤枝の「朝ラー文化」のはじまりと言われています。
とはいえ、なぜご当地である藤枝ではなく、下北沢に出店することになったのでしょうか。まる藤ラーメンのPRを担当しながら、下北沢の情報サイト「しもブロ」を営む黒田さんにお聞きしました。

(左)まる藤ラーメンPR担当:黒田正信さん/(右)店員:渡邊清楓さん

「去年開催された『下北沢カレーフェスティバル』というイベントに、藤枝市の有名ハンバーグ店『小川商店』さんが、下北沢のカレー屋さんとコラボ出店されたんです。それがきっかけでご縁ができて藤枝市にお邪魔した時に、温・冷の二種類を食べる朝ラー文化に触れて、これは面白い!と。その後、朝ラーを20店舗ほど食べ歩き、フジカツの皆さんと下北沢でもやれたらといいね、と話していたんです。そうしたら、小川商店の小川シェフが『僕がやります!』と開発に手を挙げてくださり、とんとん拍子で実現しました」

ただ開店前、黒田さんもフジカツの皆さんも、下北沢に馴染みのない朝ラーが受け入れられるか「かなり不安だった」と言います。それがいざオープンしてみたところ、初日の朝一番から来客があり、団体客も足を運ぶなど滑り出しは上々。下北沢は朝まで飲んでいる人も多く、「〆のラーメン」が朝に食べられるとあって既にリピーターが何人もいるそうです。

カウンターとテーブル2卓の店内。バーの間借りで営業中

「早朝は、お酒の〆で食べる方や、居酒屋で朝まで働いていた方のご来店が多いです。それと、特に下北沢っぽいと感じるのは、朝一でバンドマンが多いこと。深夜はスタジオ代が安いので、夜通し練習をしていたと思われる楽器を担いだ方達がグループで来てくれるんです。中にはライブの打ち上げで飲み過ぎたのかな?なんて子もいて、酔って楽器を忘れないように見守っています(笑)」

飲み歩きが盛んでサブカルチャーの聖地である下北沢は、朝ラーとは相性が良いようです。「役者」としての顔も持ち、下北沢の演劇場でも活躍の経験がある店員の渡邊清楓さんにもお話を伺ってみました。

「13時まで営業しているので、はじめはランチとしてのご利用が多いと思っていたんです。でもいちばん忙しいのは朝の6~9時頃で、下北沢にこんなに朝ラー需要があるんだとびっくりしました。スーツを着たサラリーマンの方もお見えになりますよ。温かいラーメンのあとに冷たいラーメンを食べるので、しゃっきりするのかもしれません」

「温」と「冷」の二種を楽しむ、独自のスタイル

藤枝の朝ラーメン最大の特長は、「温」と「冷」の二種類を楽しむこと。まる藤ラーメンでは「元祖志太系」と呼ばれる甘めの魚系スープを使用する藤枝ご当地の味を活かしつつ、小川シェフによるフレンチの料理人ならではのアレンジが光ります。

メニューは温冷どちらも楽しめる「朝ラーメンセット」と、温の単品「ゆず香るカツオだし醬油ラーメン」、冷の単品「天磯おろし冷ラーメン」の3品構成です。本場の藤枝では、温も冷も通常の一杯分を「おかわり」して二杯楽しみますが、まる藤ラーメンでは食べやすいようセットは「ハーフサイズの温・冷を一杯ずつ」用意しています。

(左)ゆず香るカツオだし醤油ラーメン/(右)天磯おろし冷ラーメン ※共にセットのハーフサイズ
セットは麺が半量なので、ミニサイズの丼で提供
初来店の方には、やはり「朝ラーメンセット」がおすすめ。提供は、「温」の「ゆず香るカツオだし醤油ラーメン」から。着丼して、まず目がいくのは麺の細さ。博多ラーメンの麺よりもう一段細い麺を使用しており、茹で時間はわずか15秒。朝早くお店まで足を運んでくれたお客様に、すぐに温かいラーメンを提供できるようにという優しさが感じられます。

スープはカツオと豚のWスープで、まるで蕎麦のつけ汁のような甘みを感じます。脂のくどさは全くなく、朝からでも胃にもたれずおいしく食べられる味です。
おすすめは「朝ラーメンセット」
POPで「朝ラーメンの歴史」を紹介

「温」の次に出てくるのが「冷」の「天磯おろし冷ラーメン」。こちらの麺は、コシのある平打ちのちぢれ麺。冷水と氷できっちり冷やしてあり、のど越しが抜群です。実はスープは「温」も「冷」も同じものを使用しているとのことですが、言われなければ分からないくらい温度で受ける印象が変わります。また、「冷」は、鶏天、大根おろし、生姜、梅肉、あおさ、メンマ、鰹節とトッピングが盛りだくさんです。

ラーメンを開発した小川シェフはフレンチの料理人なので、ビジュアルにもこだわったそう。藤枝では温と冷の見た目にそんなに差がないお店も多いのですが、まる藤ラーメンでは「温」は特長である「細麺」がしっかり目に入るよう、シンプルな盛り付けに。一方で「冷」はトッピングで華やかに。器も「冷」の涼しげな雰囲気が出るように、「器会議」まで開いて今のガラス製のものに決めたのだそう。
「小川シェフは大のラーメン好きで、『鰹節をトッピングしたラーメンは、見たことない』とかねてから思っていたそうで、乗せることとなりました。スープのカツオ味ともよく合い、お客様からも好評です」

下北沢での営業終了後は、4月に藤枝市でオープンを予定している「まる藤ラーメン」。店舗は、藤枝駅徒歩1分という駅チカです。

「藤枝にある朝ラーのお店は、どのお店も駅から15分以上歩くので観光客の方が足を運び辛いんです。まる藤ラーメンから、藤枝の「朝ラー」をさらに盛り上げていければと思っています」

スルスルと食べやすい、温の細麺
見た目から涼やかな、冷

今回の3店舗の「朝ラーメン」の取材を通して、「出社前の朝ごはん」としてだけではなく、「飲み明かしたのあとの〆需要」の高さを感じました。こってり系ではなく、すっきりとした「塩」味や、胃にやさしい「鰹」味のスープを使用しているのも共通していました。新型コロナウイルスが五類に移行し飲み会が再び盛り上がっていく中で、朝ラーメンもじわじわと広がっていきそうです。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2024年2月)のものです