
2013年2月27日、東日本大震災復興支援チャリティー製パン講習会が、日清製粉株式会社小網町加工技術センターにおいて、山﨑豊さん(元ジェラール・ミュロ)、伊原靖友さん(パン焼き小屋ツオップ)、上田怜さん(同)、井上克哉さん(ブーランジュリー オーヴェルニュ)、栄徳剛さん(ブラフベーカリー)、山口哲也さん(ジョエル・ロブション)によって開催された。


製パンとそれに関する材料の協賛は、池伝、伊藤忠食糧、オリエンタル酵母工業、関東商事、大山ハム、タカナシ乳業、農業法人鎌田きのこ、デドゥー、富澤商店、日仏商事、日清製粉、宮崎アシェンテ、明治乳業(50音順・株式会社称略)。日清製粉としては新製品のテロワールピュール他、リスドオル等の小麦粉を提供させていただいた。

![]() タルトフランベ |
![]() シャティーニュ |
レストラン併設の店の他、昨年渋谷ヒカリエにオープンしたル パン ドゥ ジョエル・ロブションを統括する山口哲也さんは、アルザスの地方料理「タルトフランベ」と栗粉のパン「シャティーニュ」を実演、紹介した。「タルトフランベ」は店でも販売している商品だが、フォカッチャの生地で作ろうとしたらフランス人のシェフに「それではタルトフランベではない」と言われ、ロブションのレシピ従い、そこにバターを加えて伸展性をよくしたという。フランスに敬意を表してフランス小麦「テロワールピュール」を使用。フロマージュブランに玉ねぎとベーコンをトッピングして仕上げにコルザオイル(菜種を焼いたものが原料)で香ばしさを出すのがポイント。コルザオイルは料理の前菜にも使われる。もう一品、根セロリとトリュフのタルトフランベが紹介された。「シャティーニュ」は栗粉20%、リスドオル80%での生地で栗の渋皮煮のラムシロップ漬けを包んで作られる栗を模した小さなパン。1日500個ほど作られる150円の人気商品という。

![]() パネトーネ |
![]() ミルクフランス用のフランスパン |
横浜・山手の人気店、ブラフベーカリーの栄徳剛さんは、パネトーネ種を使った「パネトーネ」と練乳バタークリームを挟んだ「ミルクフランス」を紹介した。こだわりの一つは塩。前者では塩にシママースを、後者では塩味の強いゲランドを使用。塩の成分のうち塩化ナトリウムは塩味、マグネシウムは苦味、カルシウムは甘味、カリウムは酸味と考えて、作りたいパンにあった塩を選ぶ。パネトーネは中種法でつくられたが、これはパネトーネ種「パネトーネマザー」に含まれるイーストの活性をよくするため。
商品数は売り上げに比例するものだが、一品増えると労働時間が30分伸びると考え、栄徳さんはまとめて仕込んで冷凍冷蔵を駆使する。温度管理により製造効率よく、多種のパンを出すことができると語る。
葛飾の人気店、ブーランジュリー オーヴェルニュのオーナーシェフ、井上克哉さんは、日清製粉から新発売されたフランス産小麦「テロワールピュール」を使ったパン・オレ「パン・オレ・ピュール」とポーリッシュ法のバゲット、タバチェ、ファンデュなどのフランスパン各種を「テロワールピュール ポーリッシュ法」として実演した。
![]() 井上克也さん |
![]() パンオレ・ピュール |
![]() テロワール・ピュール ポーリッシュ法 |

松戸の人気店、パン焼き小屋ツオップのシェフ、上田怜さんはホワイトサワー種によるセミハードの白いパンを4種類。粗挽きソーセージにパン生地を巻き付けた「シュトルーデルン」、くるみを練り込んだ「パン オ ノア」、スモークチーズを巻き込んだ「ロイヒャー」、そして「ブルーベリーマロン」を実演紹介した。

![]() ![]() 同じホワイトサワー種の白生地で4種類 |


チャリティー講習会も回数を重ね、あまり講師経験がない人にも前に立って実演指導してもらいたいとの思いから、今回は山﨑さんと伊原さんは裏方にまわり、昼食の料理とパン、デザートを担当した。山﨑さんはウエルカム菓子として、卵白が余りがちなベーカリーにとって好適商品ともいえる、卵白だけを使ったサブレ・ヴァニーユを紹介。昼食用にはさっくりと口どけのよいカイザーゼンメル、希少な素材で作ったそば粉のパン、そしてクリームチーズとサワークリームたっぷりのチーズケーキを用意した。
伊原さんは自店のカフェで人気のメニューから、鶏肉のマスタードソース、ニンジンのグラッセ、カリフラワーのピクルス、サラダ、マッシュルームバター、レンズ豆のスープ、そして「根っこのパン」とも呼ばれるねじった形の「ベルツェルブロート」を提供した。
![]() ルーエプラッツツオップ風昼食 |
![]() カイザーセンメル(サクサク口溶けのよいパンでサンドイッチに最適) |
![]() ルーエプラッツツオップ風昼食メインの一皿 |
![]() ベルツェルブロート |
次回のチャリティー製パン講習会は9月に予定しているが、東京だけでなく、今後は地方からの要望にも応えていきたいという。山崎氏の熱い想いに賛同者が増え、この活動は広がりを見せながら、続いていくものと思われる。