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従来のイメージから脱却 進化系「ネオそば」

さまざまなジャンルの要素を取り入れ、柔軟なアレンジで進化した「ネオそば」の存在感が増しています。モダンな店舗デザインやSNS映えする見た目など、これまでの常識にとらわれない新しさが話題です。今回は「ネオそば」を提供する都内2店舗を取材し、各店の魅力・工夫・こだわりについて伺いました。

SOBAPY(ソバピー)

JR山手線・神田駅から近い日本橋エリアで2025年11月にオープンした立ち食いネオそば屋「SOBAPY」。グリーンカレーやゴマだれなどのつゆを醤油の“かえし”で調和させた、独創的でボリュームたっぷりの二八そばを日本橋エリアで働く人々に提供しています。

SOBAPY(ソバピー)

住所
東京都中央区日本橋本石町4-4-17 ケンリョービル 1F
電話
非公開
営業時間
月・火・水10:30~15:00, 木・金10:30~20:00
定休日
土曜日・日曜日・祝日
日本橋の中央区立常盤小学校から近い場所にあります

モダンなカフェ風の店内で食べる個性的な「極太」立ち食いそば

グリーンカレー蕎麦(税込1,200円)
店主の関真光さん

「以前は奥浅草の千束通り近くで、手打ち蕎麦の店舗を経営していました。移転時に日本橋を選んだのは偶然この辺りの物件が空いていたからなのですが、人がとても多くて、浅草とは環境が全く違いますね」

そう語るのは御夫婦で店舗を経営されている、店主の関真光(せき まさみつ)さん。「SOBAPY」があるのは神田駅南口から南方向に徒歩数分の、日銀通り沿いの一角です。グレー&ウッドテイストの外観は一見するとモダンなカフェのようで、看板を見なければ蕎麦屋と気づかないかも知れません。奥に細長い店内は壁面がグレーで塗られており、立ち食い用のテーブルは店内中央の大きい1脚のみ。非常にコンパクトな店内ゆえに余計なものを置かず、シンプルで開放的な雰囲気を目指したそうです。

店内と厨房を分けるのれんや、壁面の掲示物など、所々に見られる力強い筆文字が蕎麦屋らしさをアピール。日本橋出店にあたり、知人の方が書いてくれたのだそう。

「入口部分に、子どもが描いた絵が飾ってあるでしょう?実はSOBAPYという店名は、私が『スヌーピー』が好きなことに由来しているんですが、それを聞いた知人のお子さんが可愛い絵を描いてくれまして(笑)。今はそれを店先に飾らせてもらっています」

最低限のシンプルな什器・インテリアが置かれたSOBAPY店内
手書きの貼り紙がいい味を出しています

極太の二八蕎麦と独創的なメニューが特徴

強いコシと重量感のある極太麺。アクセントとしてレモンが添えられています

SOBAPY最大の特徴は何と言っても、極太の二八蕎麦!この太さと歯ごたえの満足感にハマるお客様が多く、リピーターも増えているそう。これは「蕎麦屋界の二郎系」とも称される浅草「角萬(かどまん)」の極太麺をリスペクトしているほか、ビジネスエリアであり食の激戦区でもある、日本橋ならではの事情も関わっているのだとか。

「日本橋の蕎麦は立ち食いそばから老舗の有名店まで、経歴もジャンルも非常に沢山あります。その中でちょっと個性を出してやりたいということで、他店と差別化するために太くしていますね。本当はもっと太いのを出したいんですが、太すぎると茹で時間が長くなってしまい、時間に追われるビジネスパーソンには向かなくなってしまうので、現在の中太にしています」

また、二八蕎麦における蕎麦粉と小麦粉の配合も、加水や圧力の影響を考慮しつつ太い蕎麦に合わせたオリジナル。関さんは現在の麺が完成形とは考えておらず、あくまで通常の二八蕎麦の延長として、麺の太さや形状なども含めて常に改良し続けているそうです。

もう一つの特徴は、「SOBAPY」が「ネオそば」として知られる要因ともなっている、個性的なメニューの数々。入口横の券売機近くには蕎麦のメニュー写真が貼られ、その中には名物「グリーンカレー蕎麦」のほか、「ごまのりピー」「生海苔冷かけ」など、他店であまり見かけない名前も混ざっています。

「事前情報をお持ちのお客様にはグリーンカレーなどが人気ですが、たまたま初来店した場合には、オーソドックスな鴨汁などを頼まれますね。最初は定番メニュー、次にグリーンカレーなどを注文されるお客様が多いです」

メニュー開発は関さん自身のインスピレーションを重視しているほか、自分自身が食べた蕎麦に「自分だったらこうする」とアレンジを加えたものが多数。例えば「ゴマのりピー」は太めの蕎麦に合うよう重めのつゆを使うなど、蕎麦を食べる相手への気づかいが光ります。加えて、海苔は日本最古という歴史を誇る静岡県・浜名湖産、鴨は国産品種など、前面には出さないながらも丁寧につくられた良い食材を使用しています。

入口横の券売機近くに貼られたメニュー写真 
浅草・角萬をリスペクトした冷肉(冷やし肉南蛮)メニューも

ユニークなメニューの裏には「蕎麦屋らしい」意外な工夫も

「グリーンカレー蕎麦」は太い蕎麦にグリーンカレーのつゆがしっかりとからみつき、ココナッツミルクの甘みとスパイスの辛みが合わさってガツンとくるおいしさ!芳醇なエスニック風味をまといながら、同時に蕎麦らしさも両立させ、やみつきになる味わいとなっています。

「このグリーンカレー蕎麦は、浅草時代から引き継いでいる味ですね。浅草の店舗で一度この蕎麦を食べて、それを覚えてくれていた方が、日本橋のお店にもう一度食べに来られることもあります」

濃厚なグリーンカレー風味の裏には、実は隠し味としてそばつゆをプラス。確かに「蕎麦屋のカレー」といえばそばつゆを足しているのが定番ですが、SOBAPYのグリーンカレー蕎麦も一見ユニークなメニューながらも、実は昔ながらの蕎麦屋に近い点が強く感じられます。

グリーンカレー蕎麦のつゆは本格的な味わい
とろみのあるカレーが極太の麺によくからみます

「きざみ塩鴨汁」は他と比べてやや目立たない印象ながら、実は関さんがかなり力を注いでいるメニューの一つ。味は濃厚でまろやかさもあり、こちらも太い蕎麦とつゆの相性が抜群です。この塩鴨汁を開発するまでには、かなりの苦労がありました。

「ラーメン屋ならともかく、蕎麦屋のメニューで塩ベースって、あまり見ないですよね。大抵の蕎麦は醤油の“かえし”を出汁で割る感じですから。このメニューは少量の白醤油に沖縄の塩をブレンドして、透明な塩のかえしを作っています」

「かえしが塩だけだと水で割るしかないので、カビやすいんですよ。そこの調整と味付けの兼ねあいで、何種類も試作しました。あとは醤油ベースのそばつゆと同じように『寝かせる』ことで、味に角が立たないようにしています」

このような取り組みを重ねている「SOBAPY」は、現在でこそ「ネオそば」として有名になっている一方、そうした評判を関さん自身は強くは意識していないとのこと。

「蕎麦へのこだわりと工夫は浅草時代から引き継ぎ、伝統的な蕎麦に近い味付けを活かしている部分も多いです。お客さんや知人とのつながりに支えられているのを実感しています」

きざみ塩鴨汁(税込1,200円)
塩気のなかにほのかな甘味もあり、まろやかな味わい

J-SOBA TOKYO(ジェイソバ トウキョウ)

「蕎麦を超える、SOBA。」をキャッチコピーとして、進化系そばの食べ放題を提供する「J-SOBA TOKYO」。「カレーつゆ」「ベジとろ」といった、和・洋・中のエッセンスを融合した7種類のつけ汁を自由にチョイス可能。夜間には立ち飲みスタンドも営業している人気店です。

J-SOBA TOKYO(ジェイソバ トウキョウ)

住所
東京都千代田区神田駿河台3-4-1 新御茶ノ水龍名館ビル1F
電話
03-6206-4433
営業時間
11:00~16:00(L.O15:00 ※月~土)/
17:00~23:00(フードL.O22:00 ドリンクL.O22:30 ※月~金)
定休日
日曜日・祝日
店舗は真新しい複合商業ビルの1階に入っています

世界に羽ばたく「J-SOBA」の展開を目指す

蕎麦食べ放題スタンダードコース(税込980円)で味わえる7種類のめんつゆ
代表取締役社長・吉田光宏さん(写真左)、副社長・鈴木光代さん(右)

「J-SOBA TOKYO」があるのは東京メトロ千代田線・新御茶ノ水駅の近く。御茶ノ水というと学生街のイメージが強いですが、現在の客層はビジネスマン中心です。2026年7月には「500円で蕎麦食べ放題」イベントで大きな話題を集めました。

取材ご対応いただいたのは、店舗を運営する株式会社吉光の代表取締役社長・吉田 光宏(よしだ みつひろ)さんと、副社長の鈴木 光代(すずき みつよ)さんです。

「最初は一品ずつお蕎麦を出していたのですが、より広く当店を知ってもらうため、そしてお腹いっぱいのお蕎麦でお客様に満足していただくため、食べ放題のみにメニューを変更しました。500円で食べ放題のイベント中は行列2時間待ちなど、大きな反響がありました。はるばる山形から来られた方や、蕎麦を2kg近く食べられたお客様もいらっしゃいましたよ!」(鈴木副社長)。

店内はライトグレーの壁面やブラウンのテーブルがスポットライトで照らされ、「J」の字のネオンサインも相まって若者向けカフェのような雰囲気。こうしたインテリアは、蕎麦屋と縁遠い印象のある若い層の女性にも気軽に入ってもらう狙いがあるとのことです。

店舗づくりの裏にあるのは、蕎麦を「江戸時代に完成した和風の麺料理」という固定観念から脱却させ、海外にも通用する料理ジャンルへ飛躍させたいというコンセプト。

「例えばラーメンの場合、戦後から一気に日本全国へ普及し、昭和・平成・令和と絶え間ない進化や多様化を続け、ファストフード日本代表として海外に知られるようになりました。同じように新しい『J-SOBA』を日本の食文化として海外にも認知してもらうこと、そして世代を問わず日常に定着させることが目標です」(鈴木副社長)。

グレーベースで今風な店内に輝く「J」のネオン
店頭の立て看板

「秘伝の製法」「一般非公開」の製麺室

注目は「他の日本蕎麦はもちろん、ラーメンともうどんとも異なる、まったく新しい食感の麺」を目指して開発された、店内の製麺室で作る自家製麺。一般非公開かつ写真撮影NGの室内には、特別な製麺機が設置されています。

「うどんで有名な香川県から取り寄せた機械です。こねた生地を麺状にする切り刃部分は、ラーメンなら細め、うどんなら太めの切り幅になりますよね。当店では私と副社長とで最適な幅を工夫して、他店にない味わいや食感のため、オリジナルの切り刃を使っています」(吉田社長)。

加えて、蕎麦粉や小麦粉を練り上げる時に入れる水も、季節や気温によって量を微調整するなど、表から見えにくい場所に職人技が光ります。そば粉と小麦粉の配合にも独特の技巧があるそうなのですが、こちらは門外不出とのこと。

「機械も使いますが大半は人間の手作業によりますし、完全な製法を知っているのは私と社長だけという『秘伝』を守っています。麺の製法や粉・水の配合を変えて、調整や試食を繰り返してやっと辿り着いた味です」(鈴木副社長)。

噛みしめると違いが分かる新食感の自家製麺
一般非公開の製麺室入口

鰹と野菜の風味がきいた7+3種類のつけ汁を楽しめる

プレミアムコース(税込1,480円)で追加されるめんつゆ3種とトッピング2品

J-SOBA TOKYOの蕎麦食べ放題は、通常の麺つゆ7種類が付く「スタンダード」コースと、限定3種のつゆ&トッピング2品をプラスした「プレミアム」コースを用意。多彩な麺つゆはいずれも味や素材に深くこだわっており、とてもバラエティ豊かです。

「特に力を入れているのは野菜の出汁をベースにした「白つゆ」と「黒つゆ」です。産地を厳選した鰹に加えて、玉ねぎやセロリなどを寸胴鍋に入れて、ラーメンスープのようにコトコト2~3時間煮込んでいます。そこに貝出汁を入れたのが白つゆ、鰹昆布出汁を合わせたのが黒つゆ。通常のめんつゆとは明確に違う深い旨味を出していて、かつ当店オリジナルの蕎麦麺ともよく合う、当店の看板です」(鈴木副社長)。

白つゆと黒つゆを交互に味わって違いを確かめたくなります

「白つゆ」は貝の味わいがしっかりと、かつ柔らかく広がり、一般的なめんつゆとは一線を画す個性を発揮しています。「黒つゆ」は昆布の風味が濃厚で、やや甘くスッキリした後味があり、トッピングのゆずで味変も可能。コシが強く風味と噛み応えが抜群の蕎麦と見事に調和しています。

この白と黒を基本形として、他のつゆも多くが鰹と野菜の出汁をベースとしています。「辛味噌つゆ」はオリジナル唐辛子を使っていて担々麺のような味わい、「ごまだれ」は甘めでお口に優しい風味、ほかにも「鶏白湯」「自家製めんつゆ」「とろろ」を通常7種ラインアップしています。

「実は、鶏白湯つゆは私が発案したんですよ!当店オリジナルの麺と合うつゆを考えたとき、友人が鶏を煮出して自家製白湯を作っていたことを思い出しまして。当初は一品料理にまとめるのが難しくて諦めていたのですが、食べ放題システムを始めたおかげで、やっと夢だったスープを世に出せました」(鈴木副社長)。

プレミアムコース限定のつゆ3種のうち、「ベジとろ」は野菜の旨味がきいた白出汁に山芋・オクラ・ほうれん草をプラス。とろろ蕎麦は他の蕎麦屋でも見られますが、他の野菜を混ぜ込んでいるのはJ-SOBA TOKYOならでは。濃厚なとろみに加えて野菜のコクや爽やかさもあり、食べごたえは抜群。健康にも良さそうで、特に女性人気が高いとのこと。

「カレーつゆ」もゼロから調合したオリジナルスパイスとココナッツミルクをベースにした、J-SOBA TOKYO完全オリジナル。一般にイメージしやすい「そば屋のカレー」とは違い、スパイシーさが際立つエスニックカレーに近いテイストです。

「鴨出汁つゆ」は分厚く柔らかい鴨肉に若干甘めの出汁が染み込み、蕎麦と一緒に噛みしめると、ジューシーで満足感のある食べごたえです。

つゆのレパートリーやレシピは鈴木副社長や吉田社長、ほか店内スタッフのアイデアや工夫によって常に改善・改良しているのだとか。8月からはバーのような夜飲み営業も開始しています。「お蕎麦」のイメージにとらわれない革新的な取り組みが今後も期待されます。

ベジとろは濃厚な粘り気で、つゆを「食べる」感覚
カレーつゆは甘辛い味付けで見事に蕎麦とマッチ

今回ピックアップした2店舗について、SOBAPYはネオそばという評価にこだわらず、J-SOBA TOKYOは逆にネオそばらしさをブランディングに積極活用と、スタンスは見事に正反対。その反面、従来の蕎麦にとらわれず独創的なメニューやサービスを提供している点は共通していました。今後もユニークなネオそば店舗がさらに増加し、新たなスタイルとして定着していくのか注目です。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2026年08月)のものです。最新の店舗情報は、別途店舗のHP等でご確認ください。