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関西発 和菓子屋さんがつくる洋菓子たち

最近、いろいろな企業で本業から幅を広げて挑戦する事例を見かけます。製菓業界でもユニークな発想で新しい魅力を開拓するお店が増えています。今回は和菓子店として確固たる地位を保ちながら、洋菓子の分野にも進出して成功を収めているお店を取材しました。

一乗寺中谷

「一乗寺中谷」は、比叡山延暦寺へと続く参道にある老舗の和菓子店。宮本武蔵の決闘の地としても有名な一乗寺下り松に店を構え、伝統的な和菓子を守りつつ、和菓子職人とパティシエの夫婦が生み出す新感覚のスイーツが評判です。和菓子と洋菓子の職人が揃う中谷ならではの和洋折衷の多彩な甘味と、元和食料理人の若旦那がつくる和定食のランチが楽しめるお店です。

一乗寺中谷

住所
京都府京都市左京区一乗寺花ノ木町5番地
電話
075-781-5504
営業時間
9:00~18:00(茶家10:00~ LO17:00)
定休日
水曜日
叡山電鉄叡山本線「一乗寺駅」から徒歩約6分、または京都市営バス「一乗寺下り松町」から徒歩約1分

和菓子と茶家の伝統を基に、和洋折衷の創作菓子が誕生

絹ごし緑茶てぃらみす 2,100円(税込)
3代目の中林英昭さんと恵子さんご夫妻

中谷の「絹ごし緑茶てぃらみす」は、通常のティラミスに使われるマスカルポーネではなく、最高級のフロマージュブランで抹茶の風味を際立たせ、豆乳と白餡を加えた、若女将の恵子さんお得意の豆乳スイーツです。
小麦粉はバイオレットを使い、きめ細かく焼き上げたスポンジ生地に抹茶をたっぷりと配合した緑茶シロップをしみ込ませ、すっきりした味わいに仕上げました。
絹ごし豆腐のように滑らかで繊細な食感を実現したこのてぃらみすは、店頭販売を優先しているため通販では数カ月待ちになるほどの人気ぶりです。

一乗寺中谷が洋菓子を扱うようになった理由を「結婚した相手がパティシエだったから」と若旦那の英昭さんは笑顔で話してくれました。

結婚前に西陣で5年ほど自分の洋菓子店を営業していた恵子さん。嫁入り道具とともに自分の店の器具や什器を持ち込んでこの一乗寺にやってきたそう。しばらくは和菓子屋を手伝っていましたが、自分でシュークリームをつくったりと挑戦好きの大旦那が、「洋菓子をやってみたらどうか」と後押ししてくれたのがすべての始まりです。
緑茶てぃらみすのレシピはすぐにできましたが、箱庭をイメージして上生菓子用の折箱に流し込みたいと考えたところ、柔らかい生地がこぼれないようにするための中敷シートの開発に約2年かかったといいます。表面に砂に見立てたグラハム粉を敷き詰め、最高級の丹波産小豆、黒豆、うぐいす豆をトッピングして枯山水の庭を表現しました。

食べるのがもったいない、枯山水の素敵なデザイン
色鮮やかな柳桜園さんのお抹茶を使用

中谷では和菓子職人と洋菓子職人が同じ厨房で働いています。
「夫からはよくそんなに面倒くさいことができるなと言われますが、洋菓子は配合を守ればきちんとしたものができます。けれど和菓子はシンプルなだけに難しさがあると思います」(恵子さん)。

また和菓子は季節感を大事にしていて、節句や年中行事などに決まったお菓子を食べる習慣があり、つくる時期も決まっています。
「うちは両方やっているので、冬のシーズンはクリスマス、正月、バレンタイン、ひなまつりと大忙しです」(恵子さん)。

店頭を飾る看板に地域とのつながりを感じる

現在お店を切り盛りしているのは3代目の中林さんご夫妻。若旦那の英昭さんは料亭で板前を経験した後に、家業の和菓子の世界に入りました。料亭での修業で良いものを見る目が養われたそう。パティシエとして働いていた恵子さんと出会い、結婚。今はふたりで和と洋が調和したお菓子をつくっています。

若女将の恵子さんは、以前の職場で手づくりのシュークリームをふるまう機会があり、みんなから「本職並み」と褒められたことがきっかけで洋菓子の世界に入ることを決意。ケーキ屋でアルバイトをしながら勉強したそうです。

素朴な羊かんから始まった地域で愛される店

でっち羊かん 600円(税込)

一乗寺の郷土銘菓「でっち羊かん」の店として知られる一乗寺中谷。この地にゆかりのある武蔵の刀のつばをイメージした「武蔵」や、近くの詩仙堂にちなんだお菓子を求める常連さんで賑わいます。

でっち羊かんは、江戸時代からこの地域で食べられていた携行食で、商いや祭りの栄養補給に使われていたそう。あっさりとした高級白双糖で粒餡を作り米粉と練り合わせ、竹の皮に流して蒸し上げるという製法を今も続け、伝統の味を守っています。中谷のでっち羊かんは薄く延ばしているので火の通りがよく、米粉がもちっとやわらかな食感を引き出し、歯ごたえは「羊かん」と「ういろう」の間くらいです。

洋菓子は「絹ごし緑茶てぃらみす」以外にも、たくさん誕生しています。さっくりと香ばしく焼き上げたタルト生地の中に、特製のアーモンドクリームをたっぷりと流し込み、焼き上げた「三色お豆のタルト」。上質のアーモンド粉をふんだんに使い、コシのあるカスタードクリーム、きめ細やかな白餡をミックスしたアーモンドクリームは、中谷だけの味わいです。トッピングの小豆は丹波大納言、黒豆も丹波産、うぐいす豆は北海道産の極上品で、若旦那こだわりのセレクトです。

「白みそと木の実のケーキ」は京都石野味噌さんの特上の白みそと、木の実を合わせたケーキ。「白みそを使った焼き菓子ができないか」と試行錯誤していたとき、ヨーグルトを加えると風味が出て爽やかで味わいが軽くなることに気づいたとか。ヨーグルトの分量はしっかりとみその味を感じられ、かつ邪魔にならないちょうどいいバランスを見極めました。生地の中にはリンゴのコンポートが入っていて、香ばしい木の実のアクセントとともに食感も楽しめます。遠方からのお客様にもお土産として持ち帰ってもらえるお菓子として重宝されています。

三色お豆のタルト 1,400円(税込)
白みそと木の実のケーキ 1,400円(税込)

現在、中谷には和菓子職人2人、洋菓子職人3人が働いています。同じ厨房で作業しているので「お互いの作業には立ち入らない」のが暗黙のルール。けれども「こんなあんこをつくって欲しい」「わらびもちをジャスミンティで炊いてみて」などとお互いにお客様目線でリクエストして、新しい商品が生まれています。
モンブランケーキをつくろうとしたとき、ふと見ると薄くのばした栗むし羊かんがあったので丸い型で抜いて、カシスのムースと抹茶のスポンジをのせてみたそう。こうして誕生した中谷オリジナルの「栗むしモンブラン」は、10年以上続く人気商品になっています。

「新しいものを考えるときには、単純に和と洋を合わせるのではなく、A+Bの間にCを加えることを大事にしています。ちりめんじゃこ屋さんから山椒でお菓子ができないかと相談され、豆乳を使ったフィナンシェに山椒を入れたらヒット。こうしたコラボ商品にも積極的に取り組んでいきたいと思います」(恵子さん)。

一乗寺中谷が運営するオンラインショップ「おさんじ」にも反響があり、人気の商品は数カ月待ちで売り上げも伸びてきているそう。インスタを見て来店してくれたり、遠方からのお客様も増えています。

「これからも中谷オリジナルの和と洋が融合したスイーツを、たくさんの人に届けることを目指しています」(恵子さん)。

懐かしい雰囲気の店内に、所狭しと商品が並ぶ
お菓子と飲み物、おやつやランチが味わえる茶家

MUKASHIN plus(ムカシンプラス)

泉北ニュータウンを南北に貫く幹線道路沿いにあるMUKASHIN plus(ムカシンプラス)。南大阪を中心に21店舗を展開する明治25年創業の和洋菓子店「むか新」の店舗の一つで、定番・季節限定など親しみあるいろいろなスイーツが揃っています。
出来たてのパフェやモンブラン、ピザなどか食べられる「カフェ」、焼きたてのたい焼きや揚げたてドーナツなどを提供する「スイーツラボ」も併設され、他店にはない魅力が満載のお店です。

MUKASHIN plus(ムカシンプラス)

住所
大阪府和泉市いぶき野3-16-6
電話
0725-57-0880
営業時間
9:00~19:00(カフェLO18:00)
定休日
水曜日
南海電鉄泉北線「和泉中央駅」から徒歩約10分

こがしバターとの出会いで、他にはないお菓子が誕生

こがしバターケーキ
お話を伺った広報、製造担当の皆さん

2002年の「和泉の国本館」(リニューアル前のMUKASHIN plus)の開店記念として発売された「こがしバターケーキ」。フィナンシェでもマドレーヌでもない焼き菓子で、表面はフォンダンのシャリシャリとした食感、中はきめ細かくしっとり、ふんわりとした食感が特徴です。

「洋菓子の技術とともに、和菓子ならではの練りの技術を活かし、生地に独特な食感を生み出しています」

油脂には、バターのみを使用し、隠し味には種子島産ブラウンシュガーと生絞りレモンを加えています。仕上げにオリジナルのレシピのフォンダンを一つずつ手作業で塗っています。

書は第208世東大寺別当・清水公照氏によるもの

1892年に佐野町(現・大阪府泉佐野市)で創業したむか新。「むらしぐれ本舗」ののれんを掲げ、泉州地方に伝わる郷土菓子「むらしぐれ」を看板商品として歴史を歩み始めました。その後、時代の変化とともに洋菓子の取り扱いもスタート。現在へとつながる和洋菓子を取り扱うお店へと発展していきました。

とある縁で知り合ったオーストリア人マイスターから、こがしバターのレシピを教わったことで、こがしバターケーキが誕生しました。こがしバターはこだわりのバターを銅釜でじっくりと熱し、コクと風味を凝縮させた芳醇な香りが特徴です。

マイスターからこがしバターを教わり、つくりはじめたこがしバターケーキですが、うまくいかないこともありました。社内にうまくいかない理由を聞く人がおらず、何度もテストをして原因を探る、本を読んで調べるなどすべてが手探りだったそう。
また、材料を混ぜたり、熱い天板を運んだり、すべて人の手で行っていたとのこと。
「季節によってなぜかうまく焼けないときもありましたが、今は気温差、材料など、経験で予測しカバーできるようになりました」

むか新のお菓子は、羽倉崎(泉佐野市)の工場でつくられています。美味しさを追求するための手間は惜しまず、お客様が食べる瞬間が最高の状態になるよう、すべての職人が心をこめてお菓子づくりに取り組んでいます。

「常に最高の味を維持することは、決して簡単なことではありません。同じ手順、同じ材料、同じ分量でつくったとしても、その日の気温・湿度などによって同じ仕上がりになると限らないからです。職人の長年の経験や鋭い感覚を大切に、常においしくなるように日々研究を重ねています」

芳醇なこがしバターの香りとふんわりした生地がたまらない 
オーストリア人マイスター直伝のこがしバター

130余年の老舗和菓子店が、アイデアと職人の技術で可能性を広げる

こがしバターケーキを販売する中、こがしバターをつかった食感の違うお菓子を研究、開発していきました。「こがしバターカステラ」は、カステラらしいずっしり、しっとりとした焼き上がり。一つずつ型に流し入れて焼くので、たくさんはつくれません。ふんわりきめ細かな生地になるよう、つくっています。

2014年には「こがしバターサブレ」を発売しました。こがしバターの風味を生かし、ザクッとした食感が特徴のお菓子です。ココナッツバターサブレ、マカダミアバターサブレ、季節限定のソルトバターサブレなど新しい仲間が増え続けています。

こがしバターサブレ
こがしバターカステラ
むらしぐれ

1892年、初代・向井新與門(しんよもん)が泉佐野市で商売を始めたのがむか新のはじまり。「むらしぐれ本舗」ののれんをかかげて、郷土菓子「むらしぐれ」を看板商品として販売する小さなお店てしたが、現在は南大阪を中心に21店舗を構える会社に成長しています。

むか新では素材にこだわり、それぞれの特長を引き出せるものを厳選して使用しています。例えば小麦粉ひとつをとっても、商品ごとの食感・味わいがより際立つものを選び、お菓子づくりに欠かせない小豆やもち米、季節を彩るくだものなどは、産地の農家へ直接出向いて勉強することもあります。

どんなに時間や手間がかかったとしても、ていねいな仕事をするのはむらしぐれの製造にも表れています。北海道十勝産の小豆を煮て、皮を取り除いてから水にさらし絞って出来た生餡と米粉、もち米、砂糖などを混ぜてそぼろ状にして型枠に入れて蒸し上げます。型枠に入れる分量や力加減に独特のコツがあり、職人たちは先輩の仕事を見て習うそうです。

1994年9月に関西国際空港開港の記念銘菓として「元祖大阪みたらしだんご」を発売しました。だんごとたれを逆転させるユニークな発想は、多くのメディアで取り上げられ、大阪土産として空前の大ヒットとなりました。

2010年には、こがしバターケーキがモンドセレクション金賞を受賞。その後、DLG[ドイツ国際品質競技会]金賞の受賞、2026年にはITI優秀味覚賞三ツ星を5年連続で受賞し、世界の品評会でも評価されています。こうした受賞や、メディアでの紹介で認知度が高まってきました。現在は、駅や空港での販路拡大、阪神百貨店への出店などにより、こがしバターケーキの名前も広く知られるようになりました。
「こがしバターケーキ」が有名になりましたが、今後も多くの人の手に、むか新のたくさんのお菓子を届けたいと考えているそう。
新しい商品の開発や、「秋の餡まつり」、主力の元祖大阪みたらしだんごのみたらしだれをつかった商品が登場する「夏のみたらし祭り」の開催など、可能性は無限大です。

広い店内には多彩なお菓子が並ぶ
スイーツや出来立ての味も楽しめる本格的なカフェ

うめぞの CAFE & GALLERY
(カフェ アンド ギャラリー)

「うめぞの CAFE & GALLERY」は、ギャラリースペースのある落ち着いた雰囲気の町家カフェ。四条烏丸の交差点からほど近い住宅街にある町家の玄関をくぐると、モダンなインテリアが出迎えてくれます。京都の甘党茶屋として有名な「梅園」の支店らしく、名物みたらし団子やあんみつ、かき氷、ぜんざいなどの他に、洋風の抹茶ホットケーキもあり、わざわざ探してでも行ってみたいお店です。

うめぞの CAFE & GALLERY(カフェ アンド ギャラリー)

住所
京都府京都市中京区不動町180
電話
075-241-0577
営業時間
11:30~LO 18:30
定休日
無休
京都市営地下鉄「四条駅」、または阪急京都線「烏丸駅」から徒歩約7分

京の甘党茶屋の魅力を、未来に伝えるための洋菓子

抹茶のホットケーキ 1,250円(税込)
※抹茶のホットケーキの提供は夏の間はお休みし、秋ごろ再開の予定です
スタッフの皆さん。中央が店長の岡田さん

うめぞのCAFE & GALLERYでぜひ食べたいのが「抹茶のホットケーキ」です。宇治田原産の抹茶をたっぷり使い、風味豊かに焼き上げています。お皿にはフランボワーズ・抹茶・きなこ・こしあん味の4種類の餡が添えられ、きび砂糖と黒糖のシロップ、お箸が付いてきます。
注文が入ってからメレンゲを泡立てるので、提供まで20分くらいかかりますが、その厚みとフルフルとした食感、「お箸で食べる」ユニークなホットケーキは大人気。ふわっと軽いのでペロリと食べられますが、しっかりお腹にたまる食べ応えもあります。

洋菓子を始めたきっかけは、3代目・西川葵さんの「和菓子の魅力を伝えたい。京都の甘党茶屋の伝統を未来につなげたい」という強い思いでした。

梅園のベストセラーであるみたらし団子は日持ちがせず、持ち帰りには向かない商品です。そこで和菓子だけでなく日持ちのする商品を増やし、他店との差別化を図りたいと洋菓子の製造販売を始めました。
デパートで買う高級なお菓子と庶民の味の中間に位置する「日常のおやつ」として、必要とされ続けたいと考えたそう。そうした中、2010年に「うめぞの CAFE&GALLERY」を立ち上げ、店内で焼くホットケーキの提供を始めました。

西川さんは小さい頃から両親の仕事を間近に見て、お菓子づくりに親しんでいたと言います。「子どもの頃から工場の材料を使わせてもらって、自分なりにアレンジを加えてお菓子をつくるのが好きでした」(西川さん)。しかしCAFE & GALLERYで提供できると納得のいく商品づくりには苦労したそうで、抹茶のホットケーキを完成させるまでには、材料の配合を5gずつ変えたり、卵を変えたりと、試行錯誤の連続でした。
「父は蕎麦なども置いたほうがいいのでは?と言ってくれたのですが、私はあくまで甘党茶屋を貫きたくて」(西川さん)。今では地元のリピーターはもちろん、全国からファンが訪れるお店になりました。

とても柔らかいので、お箸だけで簡単に食べられる
低温の銅板でゆっくりと焼き上げる
手書き風の木の看板がお客様を出迎える

西川さんはみたらし団子やわらび餅をつくる様子を見ながら育ち、料理の専門書を読んでは「こんなお菓子をつくれたら、お店にプラスになるんじゃないか」とアイデアを膨らませていたそう。ご両親はお店を継がせるつもりはなかったそうですが、大学生になるとお店でアルバイトを始め、周囲の信頼を得て3代目を継承しました。

梅園の商品は一部を除いて2カ所の工場でつくられています。洋菓子やお持たせにできる菓子は機械を使ったりしますが、バターサンドの焼き印はひとつずつ職人の手作業です。

和菓子はベテランの職人が早朝6時ころから仕込みを始め、みたらしのお団子は1日に何千個も手作業でつくっています。
「梅園名物のだんごの中には固めるための砂糖が入っていません。秘伝の技で固めているんですよ」(西川さん)。

梅園の魅力は伝統を守りつつ変化を続けてきたこと

みたらし団子 5本600円(税込)

甘党茶屋 梅園は昭和2年に京都河原町で創業した甘味処で、みたらし団子だけの小さなお店からスタートしました。看板商品のみたらし団子は、俵形をした独特の形の食べやすいサイズ。柔らかく弾力のあるお団子で、他所では食べられないもちっとした食感が愛されています。みたらし団子の味を決めるたれは、ほどよい甘さでくせになる味。「どれだけ食べてもあきない」と50年以上通い続けている常連客もおられるそう。創業時から変わらず、梅園独自の味を守り続けています。こんがりとしたおこげも食欲をそそります。

みたらし団子はお店で出来立てを食べるのが一番ですが、ー何とかお持ち帰りできる、日持ちのするお菓子にできないかーと考え、生まれたのが「みたらしバターサンド」です。さっくり焼き上げたクッキー生地にみたらし団子のたれと、大吟醸の香るバタークリームをはさんでおり、みたらしの甘辛さとバタークリームの芳醇さが合わさった独特の美味しさです。「梅園 oyatsu」ジェイアール京都伊勢丹店で販売しています。
同様にたれを活かした「あんマドレーヌ」はマドレーヌ形の焼きまんじゅう。バターを配合したなめらかな生地で、白餡とみたらしのたれを包んで焼き上げています。ひと口食べると梅園伝統の甘じょっぱいみたらしのたれと、優しい白餡の香りが口の中に広がります。基本のみたらし味の他に、宇治金時や黒糖カカオなどのバリエーションもあります。

みたらしバターサンド 5個入り1,549円(税込)
あんマドレーヌ 5個入り1,269円(税込)

うめぞのCAFE & GALLERYをオープンしたとき、古き良き趣のある河原町店と雰囲気がまったく違うので、「梅園さんがなんで?」と言われたことも。一方で新しいお菓子や今までのイメージとは違うお店をつくっても、常連の方からは不思議と前向きな反応も多かったそうです。
ただメニューに関しては、「昔からのお客様が求めているのは、こういう新しいものじゃない」と分かってからは、和菓子に関してはほとんど何も変えていないそう。

お店はCAFE & GALLERY以外にも、創業店舗の甘味茶屋 梅園「河原町店」、清水寺近く、産寧坂にある甘党茶屋 梅園「清水店」、寺町通にあるモダン建築をリノベーションした甘味茶屋 梅園「三条寺町店」、おもたせ専門の焼き菓子販売店舗「梅園 oyatsu」ジェイアール京都伊勢丹店、焼き菓子販売とみたらし団子の実演販売店舗の「京 みたらし 梅園」西武池袋店があり、現在はこの6店舗で営業しています。
雑誌で紹介されたり、ネット販売も好調で、お中元・お歳暮の時期には社員総出で発送作業にあたるといううれしい悲鳴を上げています。

京町家らしい中庭が望める1階の店内
2階は食べながら鑑賞できるギャラリースペース

ジェイアール京都伊勢丹店と西武池袋店を除いた4店共通で食べられるのは、あんみつ、ぜんざい、わらびもち、かき氷など。CAFE & GALLERY独自メニューには、ホットケーキや生ふパフェなどがあります。「季節のメニューを増やしたいですね。四季折々に食べ物を感じて、またあの味を食べに来たいと思われるようになれたらと思います」(岡田さん)。

自分のつくったものを喜んで食べてくれるのを見るのが幸せと言う岡田さん。「また来ます」の一言が最高のご褒美だといいます。忙しい時は大変だけど、ひと段落した時の達成感が次のモチベーションにつながっているそう。「多くの常連客の心をつかむ歴史あるお店を守り続けて、『変えること、変えないこと』の双方を大切にして、梅園の味を気軽に楽しんでもらえる店づくりを続けていきたいです」(岡田さん)。

和菓子の老舗に洋菓子職人が嫁いできたら…。長く地域で愛されてきたお店が、オーストリア人マイスターと出会ったら…。和菓子に親しんで育った女性が新しいお店をつくったら…。今回取材したそれぞれのお店が持つ和菓子店としての伝統や技術が、洋菓子と出会うことで大きな変化や成長を遂げていました。無限の可能性を秘めたチャレンジと将来を見通す戦略が、皆さまの事業展開のご参考になれば幸いです。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2026年06月)のものです。最新の店舗情報は、別途店舗のHP等でご確認ください。