手軽に楽しめる中華料理として親しまれてきた「点心」。テイクアウトや食べ歩き需要の高まりを背景に、専門店の出店やメニューの多様化が進み、従来の枠にとらわれないスタイルも増えています。素材や製法にこだわった本格派から、独自のアレンジを加えた新感覚の点心まで、バリエーションは実にさまざま。今回は、個性豊かな点心を提供する3店舗を取材し、各店のこだわりやメニュー開発の工夫を探りました。
毎週シュウマイ
東急東横線・綱島駅西口からすぐの場所にある「毎週シュウマイ」は、シュウマイ愛があふれる家族経営の店。丹精込めて作り上げたオリジナルシュウマイは、店内でも、持ち帰りでも、食べ歩きでも楽しめると、地域住民を中心に多くの人々から愛されています。
毎週シュウマイ
- 住所
- 神奈川県横浜市港北区綱島西1-6-19 綱島コア15
- 電話
- 045-900-0444
- 営業時間
- [イートイン]11:30~20:00(L.O.19:30)
[テイクアウト]11:00~20:00 - 定休日
- 日曜日・不定休あり
※シュウマイがなくなり次第、営業終了

白菜で軽やかに。さっぱりジューシーなシュウマイ


綱島駅の目の前に店を構える「毎週シュウマイ」。看板メニューの「蒸したてシュウマイ」のほか、「揚げシュウマイ」や「日替わりシュウマイ」など、バラエティに富んだシュウマイが店頭に並びます。店長を務める吉田恒平さんがつくる自慢のシュウマイをご飯のお供として楽しむ「ごはんセット」、酒の肴としても楽しむ「ちょい飲みセット」も人気です。
吉田さん自身がシュウマイに魅了されたのは、東京・中野の「手作り点心 また明日。」のシュウマイを食べたことがきっかけ。豚肉特有の臭みが少なく旨味の強い和豚もち豚を使用したとんがり型のシュウマイに衝撃を受け、同店で1年半の修行を積み、レシピの完成には4年の歳月をかけました。
2024年にオープンした「毎週シュウマイ」では、修行元のシュウマイのフォルムと使用する豚肉を踏襲しながら、国産のオイスターソースでコクを出し、紹興酒で味の奥深さを引き出す工夫も。さらに、シュウマイの具材として一般的な玉ねぎではなく、白菜のみじん切りを入れる独自のシュウマイを開発しました。
「私はあまり玉ねぎの後味が得意ではなく、代わりにジューシーで軽やかな甘みの白菜を使用しています。ただ、白菜は水分量や味に個体差があるため、日々工夫が必要です。ジューシーさを損なわないように塩もみの加減を微調整しながら、片栗粉をまぶす量を日によって変え、甘みが強ければ調味料の量を調節して味を整えています」
日替わりシュウマイは、ピリッと爽やかな味わいが特徴の「柚子こしょう味」や「もち米シュウマイ」など、個性的なメニューの数々が並びます。
「これまでに10種類以上の日替わりシュウマイを開発してきました。お客様からアイデアをいただいて新しい味が生まれたこともありますし、意外と直感と思い付きで作ったもののほうが上手くいくことが多いです。」


冷めても旨い。その理由は“蒸しと温度”
「毎週シュウマイ」の商品は時間が経ってもおいしく食べられると、テイクアウト商品としても多くのお客様に愛されています。そこにはさまざまな研究を重ねた足跡がありました。
「シュウマイの皮は、決まるまでにいくつもの製麺所とやりとりを重ねました。決め手は、時間が経っても小麦の香りと味わいを楽しめて、尚且つむっちりモチモチとした食感であること。また、何分蒸して何度で保温するのがベストなのか、何度も検証を重ねました。修行先は10分でしたが、当店のシュウマイは8分。強火で蒸したあとに70℃で保温すると、油が適度に落ちて皮と肉が一体化しておいしくなるんです」
テイクアウト用はプラスチック容器以外にも、カップに入れて食べ歩きができる形式でも提供しています。また、蒸しシュウマイを180℃の油で3分揚げたカリカリ食感が特徴の「揚げシュウマイ」も人気商品のひとつ(※店内限定)。定番の「蒸したてシュウマイ」以外の日替わりシュウマイでも揚げることが可能です(※シュウマイ1個につき+10円)。


シュウマイのおいしさを新たな視点でお客様に提供する吉田さん。今後の目標を聞くと「綱島名物を目指します!」という力強い答えが返ってきました。
「日替わりメニューのひとつ『大葉シュウマイ』を開発したのも、綱島名物の大葉を使って、地域の皆様と一緒に盛り上がりたいという気持ちがあったから。私は綱島という街が大好き。当店のシュウマイを見て『綱島のお土産といえばこれだよね』と思ってくれるお客様をもっともっと増やしていきたいですね」


台湾老劉胡椒餅
京王井の頭線・JR中央線の吉祥寺駅から徒歩1分の場所にある「台湾老劉胡椒餅(たいわんろうりゅうこしょうもち)」は、台湾のご当地グルメ「胡椒餅」の専門店です。2022年11月の開店以降、連日客足が途絶えず、多くのリピーターも獲得。本場の味を知る人からも高い評価を得ています。
台湾老劉胡椒餅
- 住所
- 東京都武蔵野市吉祥寺南町1-11-1
- 電話
- 0422-24-8026
- 営業時間
- 12:00~19:00
- 定休日
- なし

台湾屋台の味『台湾老劉胡椒餅』をそのまま日本で


吉祥寺駅南口を出てすぐの交差点で信号待ちをしていると、甘さと辛さが混じりあったような芳醇な香りが鼻腔をくすぐります。その信号の向かい側にあるのが、国内唯一の胡椒餅テイクアウト専門店『台湾老劉胡椒餅』の吉祥寺店です。
「胡椒餅」は台湾の夜市に並ぶ屋台では定番のご当地グルメ。台湾豚や三星葱(台湾特産の葱)などを入れた肉だねを生地で包み込んだ、肉まんに近いサイズの食べ物です。それぞれの屋台が独自にスパイスを調合しているため、甘口から辛口まで、その味わいはさまざまです。

『台湾老劉胡椒餅』で代表を務める永野加奈さんは、台湾旅行中に創業60年を超える老舗『老劉胡椒餅』と出会い、「この味を多くの日本人にも知ってほしい」と考えました。その後、店主・劉さんのもとで胡椒餅づくりの修行に励み、帰国後は国内4か所(吉祥寺・鎌倉・京都・仙台)に「台湾老劉胡椒餅」を開店しました。
「劉さんの豚肉胡椒餅は、ひき肉を使う一般的な胡椒餅とは違い、台湾豚を角切りにしています。ジューシーでゴロゴロとした豚肉と胡椒の利いたスパイシーな味わいが特徴です。当店ではそのレシピに倣う形で、本場と同じ調味料、さらには劉さんから定期的に届く門外不出の秘伝スパイスで味付けをしています。輸入の難しい三星ネギは風味の近い細ねぎを、台湾豚の代わりに国産豚を使用し、肉のカット幅はすべて揃えて調理。皮の食感を左右する粉は、台湾から持ち帰ったサンプルを成分分析し、同じ配合にしたブレンド粉を特注しています」
カリッザクッが生まれる「特注の窯×ミルフィーユ生地」
胡椒餅の楽しみとして外せないのは、皮の食感。『台湾老劉胡椒餅』の商品は、皮の表面はカリッと、内側はザクザクとした食感です。「当店の窯は台湾で使っていたものをベースに、日本の窯専門店に特注しました。熱の入り方も均等で本場の窯以上のクオリティです。肉だねを生地で包んだ胡椒餅をひとつひとつ手作業で押し付けて、300℃以上の高温で焼きあげてカリッとした食感に仕上げています」
皮のザクザクとした食感の秘密は、独自の製法にあります。
「練り込んだ生地の上に油の多い生地を塗るように乗せ、さらに折り込んで広げる。これを繰り返すことでミルフィーユのような何十層もの生地ができ、噛むたびに崩れていくようなザクザクとした食感が生まれます」


豚肉胡椒餅とともに看板メニューと言えるのが「牛肉胡椒餅」。牛肉と玉ねぎを混ぜ合わせ、豚肉胡椒餅とはまた違った劉さんの秘伝スパイスを使用した逸品です。このほか、小ぶりながらも肉汁たっぷりの肉まん、台湾フルーツジュースなど夜市でおなじみのドリンクメニューも充実するなど、どれも本場の味を楽しめるラインアップです。
吉祥寺に開店して3年。開店当初はテレビ取材なども多く、話題性で集客がありましたが、今はリピーターが着実に増えてきた手ごたえがあると永野さんは言います。
「胡椒餅を日本の新たな定番メニューとして根付かせたいですね。ゆくゆくはコンビニのホットスナックコーナーで、肉まんと並んで胡椒餅が当たり前に並ぶような存在を目指しています。そのためにも、当店の味が台湾と日本の懸け橋となるように、一つ一つの商品を丁寧にお客様に届けていきます」


KABUKI餃子 新宿本店
東京メトロ新宿三丁目駅から徒歩3分の場所にある「KABUKI餃子 新宿本店」は、夕方から早朝にかけて客足が途絶えない新進気鋭の居酒屋です。看板メニューの「KABUKI餃子」のほかに、「KABUKIおでん」「おでん出汁の〆うどん」などのユニークなメニューの数々が話題を集めています。
KABUKI餃子 新宿本店
- 住所
- 東京都新宿区歌舞伎町1-2-19 藤守ビル 2F
- 電話
- 03-6233-7779
- 営業時間
- [月〜土・祝日の前日]18:00〜28:00
[日・祝日]15:00〜24:00 - 定休日
- 無休

カリッ、モチッ、ジュワッ! シズル感あふれるKABUKI餃子


2025年12月にオープンした居酒屋「KABUKI餃子 新宿本店」は、その名の通り、「KABUKI餃子」が看板商品。円盤形でニンニク不使用の餃子は肉汁たっぷり。柚子の風味も感じるピリ辛なタレも含め、お酒との相性は抜群です。この「KABUKI餃子」を主軸に据えた理由を、営業本部長の渡邊竜基さんにお聞きしました。
「当店では、柚子や緑茶、生姜を使用した爽やかな和の味わいが特徴の翠ジンと翠ソニックといったドリンクが人気です。現在はハイボールがブームですが、次なるブームは翠ジンだと私は予想していて、日本人の好みに合うのはもちろんのこと、外国人客にとっても新感覚の味わいです。この翠ジンのキレと合う料理は何かとさまざまなテストを重ねた結果、肉汁たっぷりの餃子だな、と確信しました」

渡邊さんが話す通り、肉汁へのこだわりが「KABUKI餃子」の特徴です。焼き目を下にしてレンゲにすくい、箸で割れ目を入れると国産豚の肉汁がジュワッと溢れます。
「少し厚めのモチモチとした皮で肉汁を閉じ込めた当店の餃子は、『カリッ!モチッ!ジュワッ!』のシズル感を大切にした商品です。弾力のある皮は食べ応えも満足いただけるはず。当初はお皿で提供していましたが、肉汁を熱々で楽しんでもらいたいと、鉄板での提供に変えました。ジューシーで熱々な餃子のあとに翠ジン・翠ソニックを飲むことで、キレ味のある爽快感がより強まります」
KABUKI=傾奇者。型破りなメニューと店を目指して
新宿歌舞伎町に店を構える「KABUKI餃子」。この「KABUKI」の文字には、歌舞伎町という場所以外にもうひとつの意味合いがあると言います。
「『KABUKI』と聞くと、伝統芸能の『歌舞伎』を思い浮かべる人が多いと思います。ただ、私たちは“型破りな人”を指す『傾奇者』の意味を込めていて、商品開発でも“型破り”を目指しています。たとえば、餃子の形というと、片側にひだがある半月形が一般的ですが、それでは面白味がない。ほかでは見ない形にしようと円盤型にしました。人によっては『これは小籠包だ』と捉えるかもしれませんが、それも含めて『変わっているな』と楽しんでほしいです」
「型破り」の度合いを高めたメニューとして提供するのは、ピザのような味わいが楽しめる「KABUKI餃子3種盛り」。米油で揚げ焼きした餃子に明太子×チーズ、バジルソース×チーズ、トマトソース×チーズをのせた、見た目も楽しい人気メニューです。このほか、中国や台湾の料理を参考にして開発した「KABUKIおでん」も看板商品のひとつです。
「この『KABUKIおでん』は、煮卵や大根といった一般的なおでん種だけでなく、時期によっては煮込み餃子なども具材になります。鶏がら、昆布、カツオなどの和風出汁をベースに、八角や豆板醤を加えていて、濃厚な味わいの『KABUKI餃子』とは対照的に、優しい風味とほんのりとした辛さが口の中に残る、唯一無二のメニューだと自負しています」
今後は「KABUKI餃子」のブランドを大切に育てながら、多店舗展開も視野に入れたいと渡邊さんは語ります。
「将来的には日本を代表するような餃子ブランドにしたいです。そのためにも、まずは『歌舞伎町で餃子と言ったらKABUKI餃子』と言われるように着実に店を成長させたいです」


今回取材した3店舗では多彩な点心が登場し、素材の選び方や製法、提供スタイルによって、それぞれ異なる魅力が打ち出されていました。共通していたのは、伝統的な点心の考え方をベースにしながらも、現代のニーズに合わせて進化させようとする姿勢です。食事としてはもちろん、軽食やテイクアウトとしての需要も広がる点心。今後もその可能性はさらに広がっていきそうです。
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2026年03月)のものです。最新の店舗情報は、別途店舗のHP等でご確認ください。
