ホームリスドオルを語る特長/ベーシックレシピ講習会パンレシピコンクールブーランジェによるレシピパンを全身たのしもう教えて!竹谷先生
教えて!竹谷先生
皆様のご質問と答え
これまでお寄せいただいたご質問の一覧です。
※ご質問受付は終了いたしました。
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ベーカーズ・パーセントの見方について製パン教材を見るとベーカーズ・パーセントを発酵種に使う粉と本生地に使う粉を合計したものを100%とする配合表は基本的で分かり易いのですが、発酵種を加算せず、本生地の粉だけを100%とする場合や、一方で本生地ではなく発酵種に使う粉の量を100%とする配合表で記載しています。基本的なベーカーズ・パーセント以外の例外的な記述について教えてください。

地域:岡山市内 業種:リテイルベーカリー

まず、発酵種の基本的な使い方をお考えください。
欧州、米国の有力ベーカリーはほとんど全ての生地に発酵種を添加しています。その使い方の多くは、白サワー(小麦粉サワー;米国は小麦粉サワーのみが多い)と黒サワー(ライ麦粉サワー)をあらかじめ用意し、その一方、或いは両方を配合に応じて添加量を変えていきます。この場合は発酵種に使う粉の量を100%として表します。


一方、本生地の粉だけを100%とすると、ベーカーズ%の最大のメリットである副材料の配合バランス(味のバランス)をイメージすることが難しくなります。つまり、ベーカーズ%は両方使い分けることが必要なのです。


サワー種にしても、発酵種にしても、種を仕込む時は種の粉量を100%として考えて下さい。しかし、本生地を仕込む時はその前の発酵種に使う粉と本生地に使う粉を合計して100%として下さい。配合を併記することで、より種のイメージがつかみ易くなりますし、本生地での味のイメージもつかみ易くなります。

2009.09.04

ミキシング途中でさらに加水するパシナージュについて教えてください。加えるタイミングやどのような種類の生地に使用されるのでしょうか。

地域:岡山県 業種:リテイルベーカリー

バシナージュ、フランス語の動詞「バッシネ」(加える)の名詞形。通常のフランスパンの吸水が70%とすると、さらに、5~10%加えて、パンスペシオ、或いはカンパーニュを仕込みます。ロデブを仕込む時は70+20%ほどの加水になります。水を加えるタイミングは通常のフランスパンのミキシング終点を確認した後に目的の量を加えます。バシナージュするパンはクラムにモチモチ感を付けたいパンになります。加えて、フランス生地に10%程のフラックスシード、ゴマ、ヒマワリの種等を加える生地にあらかじめ数%の水をバッシネし、シード類による生地の硬化(シード類は乾燥しているため、生地から水分を奪います。)を防ぎます。或いは、パネオトラッド(生地冷蔵、冷蔵のまま加圧分割し、成形しないで、ホイロをとることもなく、焼成に移ります。)を使ってパンを焼く時は通常より5~7%加水をアップすることでより歩留の良い、美味しいパンになります。

2009.08.20

ルヴァンリキッド(液体酵母)やレーズン、ヨーグルトなどの種を使用した自家製酵母の添加量や小麦粉の持ち味を生かす使い方を教えてください。補足的にイーストも併用する方がよいでしょうか。

地域:岡山県 業種:リテイルベーカリー

自家製酵母の使い方を簡単に説明することはとても出来ません。併用についてですが、市販パン酵母の酵母量は1010乳酸菌量は10と言われています。それに対して自家製酵母の酵母量は多くて107~8です。つまり、酵母量が100分の1~1000分の1ということです。当然、乳酸菌量も同程度ありますから、酵母量に見合う発酵時間をとると乳酸菌量も多くなり酸味の強いパンが焼きあがることになります。

我々が発酵種を使う目的を考えてください。市販パン酵母の品質が向上し、昔は12~24時間かかっていた発酵時間が現在では4~6時間で充分ふっくらした、柔らかい、ボリュームのあるパンが焼けるようになっています。反面、乳酸菌の培養、活動には時間が短く、乳酸菌が作り出す有機酸の不足、遊離アミノ酸の不足が考えられます。我々、現在に生きるパン技術者は美味しいパンをお客様に提供すると同時に、時代に合った生産性を追求しなければなりません。昔のパンの美味しさと、時代に合った生産性を両立させるために、是非、発酵種と市販パン酵母の併用をお勧めします。つまり、十分な熟成時間をとった発酵種(或いは、自家製酵母)と市販パン酵母を併用し、現在のパンの何倍ものメイラード反応を実現して、風味と旨味を増したパンを焼いてください。

自家製酵母の添加量は一定ではありません。培養法によって添加量も生地温度も発酵時間も違います。信頼する技術者の配合・工程を参考にして、まずは試作し、あとはご自分の味に仕上げていくことです。

発酵種に使う小麦粉の種類ですが、乳酸菌の培養に必要な栄養素はほぼ小麦の中に含まれています。出来るだけ、ミネラルと糖分を多めに供給することが良い発酵種を作る、ポイントと考えます。

2009.08.20

日清製粉のテロワールのようにフランス産小麦100%でパンを作る際の注意点を教えてください。吸水量や生地による成形の難しさがあると言いますが詳しくわかりません。

地域:岡山市 業種:リテイルベーカリー

ご質問のようにテロワールはフランス産の小麦100%を原料にしているフランスパン専用粉です。その為か、小麦粉の灰分0.53%、租蛋白9.5%という数字の割には、吸水も多く、ミキシングもしっかりかけなければなりません。リスドオルなどは発酵時間の長さで、生地がつながってくる現象がありますが、テロワールの場合はあまり期待できません。その分、ミキサーの中でしっかり生地をつなげておきます

2009.08.07

また、パンの現場でもフランスパンの配合に生イーストとインスタントドライイーストを併用しているのはメリットがあるからだと思いますがよくわかりません。竹谷先生の見地からお答えをお願いします。

地域:岡山市 業種:リテイルベーカリー

ホテル系のパン屋さんでは、小麦粉、パン酵母を数種類ブレンドして使う事があります。かつては(昭和20年、30年代)は原料品質のバラツキを緩和する必要な処置だったと理解しています。もちろん、ブレンドする事で生地の足腰のバランスを自分なりに調節することは可能です。パン酵母にも「初期発酵の強いもの、後半の発酵の強いもの、アルコール発酵が強く、アルコール臭の強く出るもの、エステル臭の強いもの」など、菌株によって、味も香りも変わってきます。しかし、現在のような原料品質管理が行き届いている中で、小麦粉、或いは、生イーストとインスタントイーストをブレンドすることの意味は少なくなっていると考えます。
美味しいパンを作る姿勢、努力は大切ですが、配合・工程の持つ意味はしっかり理解して作業を行うべきです。美味しいパンを作ることと同じくらい大切なことは、生産性を向上することです。


蛇足ですが
生イーストと表現していますが、昨年頃からパン業界を上げてイーストというあいまいな表現を止めて、パン酵母という表現に変えています。(大手製パンの包装紙の原材料表示を確認してください。)最近、天然酵母という表示・看板が多くありますが、消費者調査をすると、天然酵母が安全で、イーストは化学合成品と誤解している方が意外と多くいらっしゃいます。酵母はもともと天然物であり、合成品は世の中に存在しません。天然の反対語は人工(合成)であり、合成酵母の存在しないものに、天然酵母という表現は適切ではないと主張しています。これまでイーストというあいまいな表現を使ってきた、パン業界も反省すべき点があり、最近はイーストという表現を止め、パン酵母という表現に統一されています。

2009.08.07

フランス(ディレクト)の仕込みでオートリーズ後、本捏ねの際、インスタントイーストと塩を同時に入れても問題ないですか?理由も教えて下さい。

地域:千葉 業種:リテイルベーカリー

現場的には問題ありません。理由は経験的なものですが、塩も瞬間的に溶解するものでもなく、インスタントイーストも塩と共存したからといって瞬時に活性を落とすものでもありません。しかし、パンを作る技術者としてそれで良いかというと、話は全く変わります。料理(特に和食)の味付けの基本に「さしすせそ」という言葉があります。調味料の使う順番です。「さ」は砂糖、「し」は塩、「す」は酢、「せ」は醤油(歴史的仮名遣いの「せうゆ」に由来します。)、「そ」は味噌。加えて、「さ」は酒、みりんを指すことも有り、酒、みりんを使う場合は砂糖の前に加えます。又「そ」をソース、グルタミン酸ソーダ(ナトリウム)等のうまみ調味料とする場合も有ります。ですから、結果に大きな違いが無いからといって順番がどうでもいい訳では有りません。考え方としてはインスタントイーストを先に加え、インスタントイーストの斑点が生地から消えた時点で、塩を加えるくらいの気持ちは必要です。


 順番と言えば、バター、マーガリン、ショートニングを同一生地に加える場合の順番をご存知ですか?これも料理の基本に則ります。形質の硬い順番から加えます。つまり、油脂を加えると生地は軟らかくなります。出来るだけ同じ硬さのものから加えるという原則です。もう1つ、塩でも砂糖でも、特に溶解の遅い粉乳はそうですが、仕込み水に溶解してから使うのが大原則です。試してください、生地感が違ってきますし、パンも良くなり、砂糖の場合は老化も遅くなります。

2009.08.03

塩を入れるタイミングで、ミキシングや、生地へどのような影響がありますか?

地域:千葉 業種:リテイルベーカリー

後塩法を例に説明します。塩にはグルテンの硬化作用があるため、小麦粉の水和を遅らせます。従って、後塩法にすることで小麦粉の水和が促進され、吸水が多くなり、ミキシング時間を3割ほど短縮し、機械耐性を良くし、パンの塩味を強く感じさせます。つまり、中種法に近い生地感と製品を得る事が出来ます。


 ついでに蛇足を1つ。冷凍生地の仕込み方法として、「後塩、後パン酵母」という考え方があります。冷凍生地の場合は生地温度の上昇を嫌い、出来るだけ短いミキシング時間でややオーバーミキシング状態までもっていきたい、遊離水の塩濃度を上げる事で氷結晶を細かくしたい、そして、パン酵母の冷凍障害を小さくするために、パン酵母の分散を意識して押さえる仕込み方法です。屁理屈のように聞こえるかも知れませんが、パン作りは細かい配慮の積み重ねです。原料を加える順番は細かいことですが、どこまで、パン生地に配慮が出来るかが、どれだけ美味しいパンを作れるかだと思います。

2009.08.03

食事パン(フランスパン)と食パンの生地をスパイラルミキサーで仕込みたいです。製パン本をみると低速で何分、高速で何分と書かれていますが、自分の使用するミキサーが異なるとき、ミキシング時間を決定するための目安はどのように考えればよいのですか。

地域:岡山県倉敷市 業種:リテイルベーカリー

ミキシングの目的
1.原材料を均一に分散・混合する。
2. 生地に空気を混入する。
3.適度の弾性と伸展性を持った生地を作る。この3点であり、
この目的をかなえる為のミキサーの基本動作としては
1.アームによるボールへの圧縮と叩きつけ。
2.引き延ばし、
3.巻き込みと折りたたみ の3つの動作です。
縦型ミキサーとスパイラルミキサーを比較すると、この基本動作の程度が微妙に違ってきます。そのことを理解するとスパイラルミキサーを使いこなせると思います。
スパイラルミキサー・・・
1.アームによる生地の圧縮:ボールの底に圧縮する力は縦型以上に強くなります
2.叩きつけ:この動作の無いことが、縦型とスパイラルの大きな違いであり、生地にも違いが出てきます。(腰のある、滑らかな生地になります。)
3.2の引き延ばし、3の巻き込みと折りたたみ:程度の差は有りますが縦型と変わりません。
スパイラルミキサーのメリット、デメリットについては下の質問をご確認ください。

2009.07.29

続きです。

地域:岡山県倉敷市 業種:リテイルベーカリー

メリット
1.少量での仕込が可能

2.吸水量が多くなる(約2%)
3.ミキシング時間が短くなる
4.生地が硬くてもミキシングが可能
5.同一ミキシングでは内相が均一になる
6.たたきが無い分、腰が出て且つ滑らかな生地になる


デメリット
1.温度上昇が早い
2.ファイナルミキシングの許容時間が短い
3.練り込みフルーツを潰し易い


また、心掛けていただきたいのは、どんな場合でも低速ではミキシングを終了しないということです。低速ミキシング主体の時でも最後に30秒~1分中速、或いは高速ミキシングを入れます。この事で生地に締まりが出て、窯伸びにつながります。

2009.07.29

標準的なディレクト法でフランスパンを仕込んでいます。縦型ミキサーで、ドラゴンフックを使用、ドライイースト予備発酵で、低速6分で完了。2時間パンチ1時間のフロアタイム後に分割という流れですが、歯切れの良い味も濃い目で焼けているとは思いますが、少し目は詰まり気味です。少し気泡を粗めにする手段として、成形時に気をつけたらいいことはあるでしょうか。

地域:茨城県 業種:リテイルベーカリー

ご指摘のように、生地が強いとボリュームは出ますが味がボケてきます。気泡を粗くする為には分割時の丸め(フランスパンの場合は丸目というよりは分割時の切り口を整える程度)でいかに生地に触れないか、成形時も極力軽い成形を心掛けます。

日本人の成形で多いのが、ベンチ後の生地をガス抜きし、三つ折にした後、左から左手で生地を捲き込みながら、右手で生地を締めて行く方法ですがこの成形方法だと形は整いますが内相は均一で詰まり気味に成ります。内相の粗さを求める時の成形方法はフランス人がする両手で全体の生地を一度に三つ折にして、目的の長さの6~7割に成形し、後は生地を締めながら長さを調整する方法です。

内相の目が詰まる直接的なこととして、ここでは、分割時の丸目の強さと、成形方法について紹介しましたが、根本的には配合、加水量、使用機械、クープの入れ方、窯のタイプ、設定温度にも影響されます。直接・根本の両面を考えて対処して頂きたいと思います。


 

2009.07.24
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