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増粘剤の麺類への応用

1.増粘剤とは?

水に溶解または分散して粘調性を生じる高分子物質のことを増粘安定剤といいます。食品用途では使い方によって、粘性を高めるのが目的で使用する場合には「増粘剤」、液体のものをゼリー状に固める作用を目的として使う場合には「ゲル化剤」、粘性を高めて食品成分を均一に安定させる効果を目的として使う場合には「安定剤」と呼んで区別しています。

麺類を製造する場合、粘性を高めるのが目的で使用することが多いので「増粘剤」が良く利用されています。即席麺においては、ほとんどの商品に増粘剤が使われています。チルド麺の分野でも調理麺や冷凍麺、LL麺などの茹で麺類に利用できるほか、レンジアップ商品などへの応用など用途が広がっています。

増粘剤は、その由来によって「種子由来多糖類」「樹脂由来多糖類」「海藻由来多糖類」「微生物由来多糖類」「植物由来多糖類」「甲殻由来多糖類」などに分類できます。

分類 基原 主な増粘剤
種子由来多糖類 植物の種子 「グアガム」「タラガム」「ローカストビーンガム」
「タマリンドシードガム」「サイリウムシードガム」
樹脂由来多糖類 植物の分泌液 「アラビアガム」「カラヤガム」
海藻由来多糖類 海藻類 「寒天」「カラギナン」「アルギン酸」
微生物由来多糖類 グラム陰性細菌の培養液より分離して得られたもの 「キサンタンガム」「ジェランガム」「カードラン」
植物由来多糖類 植物(果実・野菜など) 「ペクチン」「セルロース」
甲殻由来多糖類 エビ・カニなどの甲殻類 「キチン」「キトサン」

麺類には食感の改良剤として澱粉・グルテン・卵白などの添加物が使用されています。増粘剤は使い方によって様々な効果を発揮するので、従来の麺質とはひと味違う食感を出すための利用が注目されています。

2.麺類に利用される増粘剤の種類と基本的性質

増粘安定剤は基本的性質として「増粘・安定・ゲル化」といった性質を持っています。麺業界では一般的に麺の食感を改良する目的で利用されています。

グアガム
基原: マメ科のグアー(Cyamopsis tetragonoloba TAUB.)の種子の胚乳部分を粉砕して得られたもの。
性状: 類白~わずかに黄褐色の粉末または粒で、わずかに臭気がある。水・熱湯に分散し、粘稠液になる。水に分散して2時間ぐらい後に強い粘度を出し、以後粘度は増大し、24時間で最高に達する。でんぷん糊の5~8倍の粘稠力を出す。加熱すると、短時間で最高の粘度に達する。水溶液に少量のほう砂を加えるとゲルに変わる。水溶液は中性であるが、pH6~10で粘度最高、pH10以上で急激に低下、pH6.0~3.5でpHの低下とともに粘度も低下するが、pH3.5以下では、また粘度の上昇をみる。
効果: 麺に硬めの弾力を付与する。
 
タラガム
基原: マメ科タラ(Caesalpinia spinosa (MOL.)(O.KUNTEZ))の種子の胚乳部分を粉砕して得られたもの。
性状: 白~淡黄色。ほとんど無臭の粉末。水に溶け、エタノールに不溶。
効果: 麺の粘性を向上させる。
 
ローカストビーンガム(カロブビーンガム)
基原: マメ科イナゴマメ(Ceratonia siliqua LINNE)の種子の胚乳部分を粉砕して得られたもの。
性状: 類白~わずかに黄褐色の粉末または粒で、臭気がないか、またはわずかに臭気を有する。冷水には分散するが、一部しか溶けない。80℃で完全に溶け、粘質液になる。pH3.5~9.0でほとんど影響を受けない。このpH以外では粘度は低下する。希薄な食塩、塩化マグネシウム、塩化カルシウムの溶液によって、粘度に影響をおよぼさないが、酸、特に鉱酸や、酸化剤によって塩析し、粘度は低下する。食塩を加える前に、ゼラチン、アイリッシュモス、ぶどう糖、しょ糖、グリセリンなどを混合しておくと、ある程度、塩析が防げる。
効果: 麺のコシを強化する。
 
タマリンドシードガム
基原: マメ科タマリンド(Tamarindus indica LINNE)の種子の胚乳部分より温時~熱時水もしくはアルカリ性水溶液で抽出して得られたもの。
性状: 褐色を帯びた灰白色の粉末で、臭気がないか、わずかに特異な臭気を有する。冷水によく分散し加熱すると粘稠な液体となる。耐塩、耐酸性の増粘作用を有する。
効果: 麺に艶を与え、保水性を向上させる。
 
サイリウムシードガム
基原: オオバコ科ブロンドサイリウム(Plantago ovata FOESK.)または同種植物の種子外皮を粉砕して得られた多糖類。
性状: 類白~淡黄褐色の粉末で、臭気がないか、わずかに特異な臭気を有する。
効果: 麺に適度な弾性と粘性を付与し、茹で伸びを抑制する。
 
カラヤガム
基原: アオギリ科カラヤ(Sterculia urens ROXB.)またはベニノキ科キバナワタモドキ(Cochlos-permum gossypium A.P.De Can dolle)の幹枝の分泌液を乾燥して得られた多糖類。
性状: 淡黄~淡赤褐色の塊、または淡灰~淡赤褐灰色の粉末で、わずかに酢酸臭がある。水には溶けないが、アルカリで脱アセチルすると水溶液になる。
効果: 氷結晶の成長を抑制する。(冷凍耐性)
 
アルギン酸
基原: 褐藻類(Phaeophyceae)より、温時~熱時水またはアルカリ性水溶液で抽出し、精製して得られたもの。
性状: 白~淡黄褐色の粒または繊維状の粉末でわずかに特異な臭気と味を有する。
効果: 麺に適度な弾力を付与し、茹で伸びを抑制する。
 
アルギン酸プロピレングリコールエステル
基原: アルギン酸とプロピレングリコールをエステル結合させたもの。
性状: 耐熱性に優れ、界面活性作用がある。
効果: 麺に強力な弾力を付与し、茹で伸びを抑制する。
*使用基準があり(食品には1%以下)、他の増粘安定剤と併用しても物質名表示(アルギン酸エステル)が必要。
 
カラギナン
基原: イバラノリ科イバラノリ属(Hypnea)、ミリン科キリンサイ属(Gigartia)もしくはギンナンソウ属(Iridaea)の全藻より、熱時水またはアルカリ性水溶液で抽出し、精製して得られたもの。
性状: 白~淡褐色の粒または粉末で、無味。臭気がないか、またはわずかに特有の臭気がある。30倍の水とともに10分間、煮沸した溶液は、冷えると膠化する。水と結合し、粘度を増し、タンパク質と反応して乳化し、乳化したものを安定化させる作用がある。
効果: 麺の保水性を向上し、しなやかな粘性・弾性を付与する。また、冷凍耐性を向上させる。
 
キサンタンガム
基原: グラム陰性細菌(Xanthomonas campestris)の培養液より分離して得られたもの。
性状: 微黄~類褐色の粉末で、わずかに臭気を有する。水および熱湯に溶け、中性溶液になる。
効果: 麺にしなやかな弾性を与える。また、ローカストビーンガムや卵白粉末との併用により、さらに安定した粘弾性を付与できる。
 
ジェランガム
基原: グラム陰性細菌(Pseudomonas elodea)の培養液より、分離して得られたもの。
性状: 類白~類褐色の粉末で、わずかに特有のにおいがある。
効果: 麺にしなやかな粘弾性を付与する。
 
カードラン
基原: グラム陰性細菌(Agrobacterium,Alcaligenes faecalis CAST)の培養液より、分離して得られたもの。
性状: 白~淡黄褐色の粉末で、においはない。54℃以上の加熱によって凝固して、熱不可逆性で、凍結によっても安定で、解凍後も元にもどる、などの特異な性質をもっている。
効果: 麺にしっかりとした歯ごたえを付与し、茹で伸びを抑制する。
 
グルコマンナン
基原: サトイモ科コンニャク(Amorpho-phallus konjac)の根茎を乾燥、粉砕後、含水エタノールで洗浄して得られたもの。
性状: 麺に適度な硬さを付与し、中華麺には高い茹で伸び抑制効果がある。
 
ペクチン
基原: アカザ科サトウダイコン(Beta vulgaris LINNE var.rapa DUMORTIER)、キク科ヒマワリ(Helianthus annuus LINNE)、ミカン科アマダイダイ(Citrus sinensis OSBECK)、ミカン科グレープフルーツ(Citrus paradise MACF.)、ミカン科ライム(Citrus aurantifolia SEINGLE)、ミカン科レモン(Citrus limon BURF.f.)またはバラ科リンゴ(Malus pumila MILLER)より、熱時水または酸性水溶液で抽出したものより得られたもの。
性状: 白~淡褐色の粒または粉末で、無臭またはわずかに特有のにおいがある。20倍の水に溶けて粘稠液になる。
効果: 麺の茹で伸びを抑制する。

【増粘剤各種の茹麺(調理麺、冷凍麺、LL麺)への使用効果例】

種類 効果
粘弾性(コシ) つるみ 茹で伸び抑制
グアガム
タラガム
ローカストビーンガム
タマリンドシードガム
サイリウムシードガム
カラヤガム
アルギン酸
アルギン酸プロピレングリコールエステル
カラギーナン
キサンタンガム
ジェランガム
カードラン
ペクチン
カルボキシルメチルセルロース
グルコマンナン

◎:かなり期待できる ○:期待できる △:あまり期待できない
※麺の種類や製造工程により、効果が変わる場合もある。
(参考文献:麺業新聞 2003,6,27)

【その他の増粘剤】

アラビアガム ウェランガム セスバニアガム
アラビノガラクタン エルウィニアミツエンシスガム タラガム
アロエベラ抽出物 エレミ樹脂 ダルマン樹脂
ガディガム エンテロバクターガム デキストラン
キチン エンテロバクターシマナスガム トリアカンソスガム
キトサン オリゴグルコサミン トロロアオイ
トラガントガム カシアガム 納豆菌ガム
ファーセレラン キダチアロエ抽出物 微小繊維状セルロース
プルラン グアーガム酵素分解物 フクロノリ抽出物
アウレオバシジウム培養液 グルコサミン マクロホモプシスガム
アエロモナスガム 酵母細胞膜 モモ樹脂
アグロバクテリウムスクシノグリカン サイリウムシードガム ラムザンガム
アゾトバクタービネランジーガム サバクヨモギシードガム レバン
アマシードガム ジェランガム  
アーモンドガム スクレロガム  

3.増粘剤の相乗効果

2種類以上の増粘剤を使用することによって、相乗効果が生まれることがある。例えば「グアガム」と「キサンタンガム」を併用すると、相乗効果で一層の増粘効果が期待できる。こうした相乗効果を狙い、増粘剤を組み合わせることによって新たな麺質を作り出す可能性もある。

増粘剤 効果
「グアガム」+「キサンタンガム」 増粘効果が増す。
「タラガム」+「カラギナン」 併用することによってゲル化する。
「タラガム」+「キサンタンガム」 粘性効果が増す。
「ローカストビーンガム」+「カラギナン」 併用することによってゲル化する。
「ローカストビーンガム」+「キサンタンガム」 併用することによってゲル化する。

また、増粘剤同士を併用するだけでなく、増粘剤と他の物質によって相乗効果が生まれるケースもある。例えば、「LMペクチン」は「カルシウム」に反応してゲル化を起こす。

相乗効果の実用例

アルギン酸ナトリウムと乳酸カルシウムの相乗効果でゲル化する特性を利用して、 茹で中華麺をほぐれやすくする。

(1)麺にアルギン酸を練り込む。 ※「かんすい」を使用している中華麺にアルギン酸を練り込むと、 化学反応でアルギン酸ナトリウムになる。

(2)茹で槽に乳酸カルシウムを投入する。
麺を茹でる行程で「アルギン酸」と「カルシウム」が反応してゲル化することにより、麺の表面がコーティングされる。結果として、ほぐれやすい麺となる。

相乗効果だけではなく、増粘剤にはpHや塩類に影響されるものもあります。そのために麺の種類や製造工程により効果が変わる場合もあります。これらのことを踏まえて、増粘剤を利用すれば、組み合わせによっては今までにない麺質の開発が期待できます。

4.グアガムについて

グアガムは他の増粘剤に比べて安価で、少量でも強い粘りを得られることから麺業界で最もよく利用される増粘剤のひとつです。麺質改良剤に利用されていることも多く、他の増粘剤との相乗効果も期待して、複合製剤としても利用されています。