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具材にこだわりのあるめん

「めん」における具材は、他店との違いを際立たせる大切な「顔」といえます。その具材へのこだわりが、お客様の心に届くかどうかを左右するといっても過言ではありません。今回具材にこだわり抜いた「めん」を提供するお店を取材しました。各店の具材に対する本気のこだわりを参考にして、是非メニュー開発に役立ててください。

銀座 太常うどん

江戸時代から続く八百屋(卸業)を営んでいた店主が、「安心して、つゆまで飲み干せるうどんを作りたい」という思いでプロデュースした店、それが「銀座 太常うどん」です。新聞社や広告会社など東銀座界隈の忙しいサラリーマンたちが足繁く通う、野菜にとことんこだわった人気のうどん店です。

銀座 太常うどん
住所:東京都中央区銀座7-15-17 だいつねビル1階
電話:03-3541-2227
営業時間:11:00~15:00、17:30~23:00(ラストオーダー22:30)
定休日:土曜・日曜・祝日
東京・東銀座にある「太常うどん」

素材の味がしっかり楽しめるうどんを作ろう

店長の青木秀巨さん

江戸時代から5代続く八百屋だった「太常」がうどん店に変わったのは2010年2月のこと。社長の川北晃右さんが青果業を引退するのに伴い、青果業の冷蔵庫があった場所で何かやろう、と始めたのが、ご自身が大好きなうどんの店でした。

「社長が全国で食べ歩いたさまざまなうどんを参考にしながら、食べやすくて、素材の味がしっかり楽しめるうどんを作ろうと始めたのがこのお店です。つゆに使う出汁も醤油もすべて無添加の天然モノ。麺も香川県から小麦粉を取り寄せ、水と塩にこだわった純粋に小麦粉だけのうどんです」

店内

答えてくれたのは店員の松本美千子さん。八百屋時代から太常を支える一人です。

「私みたいに八百屋時代からのスタッフも多いですよ。だから、料理に関しては素人集団。みんなで『ああしたほうがいい』『こうしたほうがいい』と意見を言い合いながら作っています。でも、逆にそれがいいんだと思うんです。大胆なことができるというか、野菜を切っただけ、みたいな思い切った料理も提供できるんじゃないかと(笑)」(松本さん)。

切るだけのメニューでも美味しいのは、野菜そのものの味に自信があり、素材の良さを最も引き出す方法を知っているからでもあります。

こだわりの野菜をどうすれば美味しく食べることができるか

定番人気の「九条葱うどん」
新作の「木の子バジルうどん」

「やっぱり、野菜にはこだわっています。年間を通して一番人気の「九条葱うどん」で使っているのは、京都から直接仕入れた九条葱。ほかにも、旬の野菜やこれから流行りそうな新しい素材を毎朝、築地から仕入れています」(松本さん)

昔の仲間から「いい野菜が入ったよ」と声がかかることも多く、旬の野菜で作った天ぷらはこの店の自慢の逸品です。また、メニュー作りにおいても徹底されるのは、メニューありき、ではなく、仕入れてきた野菜をどうすれば美味しく食べることができるかが出発点ということ。まずはうどんと合わせてみて、さらには天ぷらにしたり一品料理にしたり。そうやって、季節ごとのこだわりの新メニューが誕生します。

「夏の人気メニューは『フルーツトマトうどん』です。おいしいトマトが市場に入った、ということで仕入れて、そこからメニューを考えました。え?トマト?って思われるかもしれませんが、トマトの旨味成分がカツオの出汁とよく合うんです。もうすっかり夏の定番メニューです。今年の新作は「木の子バジルうどん」。パスタ風うどんというか、バジルと木の子の組み合わせが絶妙にマッチしてオススメです」(松本さん)。

一年を通して、仕入れた新鮮野菜を軒先でも販売。その野菜はお店で料理として提供しているので実際に食べて味を確認することができます。これまでにない、新しい野菜体験ができるのもこの店の魅力です。

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うどん sugita

中目黒の繁華街から少し外れた静かな住宅街で営業する「うどん sugita」。周りには他にお店がないだけに、昼間にできる行列はひと際目を引きます。素材にこだわったうどんは、北海道や九州から訪ねてくるファンもいるほど、多くの支持を集めています。

うどん sugita
住所:東京都目黒区上目黒2-47-5
電話:03-3719-0699
営業時間:[平日]11:30~14:00/[土曜・日曜・祝日]11:30~15:00 ※売り切れ次第終了
定休日:水曜・木曜
東京・中目黒にある「うどんsugita」

揚げ物を武器に唯一無二のラーメン屋をやろう

店主の杉田守さん

「まったく素人から始めたうどん屋だから、他店と同じことをしていたら負ける! と思っているんです」

お店のこだわりは? という質問に力強く答えてくれたのは店主の杉田守さん。印刷業やレストランなど、さまざまな職を経験してきた杉田さんがこの場所でうどん屋を始めたのは2007年のことでした。

「次は何をやろうかなぁと思って、うどん屋かメガネ屋で迷ってうどん屋を選びました。ちなみに今かけているメガネは自分の手作りなんですよ。うどん作りもメガネ作りも、元々趣味の延長線上。だから、うどんも自己流です」(杉田さん)。

趣味の延長、という気楽な出発点ながら、一度始めると凝り性の性格が顔を出します。

店内

「自分で小麦粉からうどんを作ってみたらエラい旨かった! でも、調子に乗ってもう一度作ってみたら今度はマズかった。どうしてだろう? と思って調べたら粉が違っていたんです。じゃあ、うまい粉を探そう、とやり始めたらだんだん、塩、水、こね方といろいろ凝るようになってしまって、気づけば今のスタイルに行き着きました。素人の怖さですね(笑)」(杉田さん)。

素材を突き詰めること、そして冒頭で紹介した「他店と同じことをしていたら負ける!」という杉田さんのこだわりによって生まれたのが、sugita名物の「のりぶっかけ」。今では、さまざまなメディアでも紹介される人気メニューになっています。

他店でやってない、という強み

限定20食の「のりぶっかけ」

四国の清流・吉野川で採取した極上の青のりを練り込んだうどんの上に、うどんが見えなくなるまでもみ海苔をかけた「のりぶっかけ」。自家製醤油を軽くひと回しするのが杉田さんのオススメの食べ方です。

「昔、お土産で頂いた四万十川の青のりがとても美味しかったんです。蕎麦の古い文献なんかを見ると、海苔を練り込んだ蕎麦っていうのはあるんですが、それは海の黒い海苔。うどんと青のりでやったらどうなるだろう? と作ってみたのが『のりぶっかけ』の始まりです。四万十川の青のりはちょっとアクが強すぎたので、吉野川の青のりに変えたりと、味が安定するまでには半年はかかりましたね」(杉田さん)。

以前は7食限定だった「のりぶっかけ」。息子に手伝ってもらうようになってなんとか20食まで増やすことができたといいます。

「20食に増やすことができましたが、それでもおかげさまで売り切れるときが多いですね。他店でやってない、という強みというか、お客さんが面白がって来てくれるんだと思います」(杉田さん)。

他店にはないメニューとして、この店のもうひとつの代表作が「五色あげ」です。 「いか、えび、しょうが、ねぎ、青のり・・・・・・“たこ”が“いか”になった以外、五色あげの具材はほとんどたこ焼きと一緒です。たこ焼きみたいなものだけど、全く違うもの。嫌いな人はいないと思いますよ」(杉田さん)。

1日限定20食の「のりぶっかけ」と「五色あげ」。ここでしか出会えない味を求め、今日もsugitaには行列が生まれます。

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松翁(まつおう)

東京千代田区、神田猿楽町にあるそば処「松翁」。店で打った蕎麦やうどん、さらには季節のそばと揚げたての天ぷらを求め、昼時は行列が絶えません。作家、池波正太郎も足繁く通い、作品の中でも取り上げたお店としても有名です。

松翁(まつおう)
住所:東京都千代田区猿楽町2-1-7
電話:03-3291-3529
営業時間:[平日]11:30~15:30、17:00~20:00
[土曜]11:30~16:00
定休日:日曜・祝日
東京・神田猿楽町にある「松翁」

自分が店を持ったら天然の素材にこだわろう

店主の小野寺松夫さん

そば処「松翁」の店主、小野寺松夫さんがサラリーマンから転身し、独立したのが昭和56年、31歳のときでした。以来、ずっと大事にしているのは、蕎麦粉はもちろんのこと、昆布、椎茸、鰹節などをどう使えば美味しいつゆが作れるのか、ということでした。

「世の中には、化学調味料を使って出汁の味を調整しているところもあります。でも、化学調味料そのものの味って知っていますか?私は一度、舐めたことがありますが、もう、舌が麻痺して大変です。調味料は醤油にしても塩にしても舐められますが、化学調味料は舐められません。だから私は、天然の素材にこだわることにしています」(小野寺さん)。

そして小野寺さんの素材へのこだわりは、出汁以外の天ぷらの具材などにも波及していきます。

店内

「開店当初は、天ぷらの海老は冷凍物を使っていました。でも、どうしても尻尾が黒くなってしまう。水揚げしてすぐにしめた『あがり海老』を試したりもしましたが、やはり生きた海老には敵いません。といっても、始めたばかりの店ですから注文がどのくらい入るかわからず、生きた海老を仕入れるにはリスクがあります。そこで、店内に水槽を置くようにしたんです」(小野寺さん)。

海老以外のハゼや穴子なども生きたまま仕入れ、失敗しながらさばき方を覚えたという小野寺さん。注文が入ってからさばき、ひとつずつ揚げたてを提供する松翁の天ぷらは、そばとともにこの店の代名詞です。

いいモノを作ろう、と続けると、どうやっても“本物”に戻る

夏季限定の「茄子の冷かけ」

もりそば、けんちんそばなどの定番メニューも人気ですが、松翁の常連客が楽しみにするのは、旬の素材を贅沢に使った季節のそば。夏限定の「茄子の冷かけ」と「鮎の冷かけ」、冬限定の「牡蠣そば」と「冬茹そば」は、そばの上に乗る具材の存在感が楽しく、食欲をそそります。

「他にはない、新しいものを提供したいと思って始めました。茄子のそばは、蕎麦屋同士の集まりの時に出てきた茄子の料理が美味しかったので、『これ、おそばに乗っけて冷かけにしたら美味しいかなぁ』と思って作ってみたらやっぱり美味しかった。いつの間にか夏の定番になりました」(小野寺さん)。

そんな小野寺さんが常に心がけているのは、本物であること、です。

「たとえばわさび。修行した店では粉わさびを使っていましたが、粉わさびと本わさびを混ぜると本わさびが負けてしまう。粉わさびをおろしわさびに変えても、本わさびが負けてしまう。だったらもう、本わさびだけでいくしかない。いいモノを作ろう、と続けると、どうやっても“本物”に戻るんです」(小野寺さん)。

本物の素材で作った本物の味をお腹いっぱい食べて欲しい、というのが小野寺さんの願いです。「うちは蕎麦屋にしては量が多いと思います。老舗の蕎麦屋ってどこも量が少ない。元々、蕎麦は食事じゃなく小腹を満たすもの、という感覚からだと思います。でも、現代の蕎麦は立派な食事です。一膳でお腹が満たされる料理を提供していきたいですね」(小野寺さん)。

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港屋

東京・虎ノ門。先頃オープンした新ランドマーク「虎ノ門ヒルズ」の麓には、常に行列の絶えない店があります。その店こそ、独自のスタイルでそばを提供する「港屋」。従来の蕎麦屋からはイメージできない店構えと斬新なメニューがファンの心を掴んで離しません。

港屋
住所:東京都港区西新橋3-1-10
電話:03-5777-6921
営業時間:11:30~17:00、17:30~20:00
※売れ切れ仕舞い
定休日:土曜・日曜・祝日
東京・虎ノ門にある「港屋」

どこかにあるような店ではなく、オリジナルな店を作りたい

店主の菊地さん

「ずっと『独立したい』という思いがあり、自分の好きな蕎麦の店を選びました。私自身がサラリーマンだったからこそ、世のサラリーマンの皆様にお腹いっぱい食べていただきたい、という気持ちがあります」。

以前は銀行マンだった菊地さんが2002年に創業した「港屋」は、独自のスタイルとお腹いっぱいになるボリューム感が評価され、毎日行列の絶えない人気店です。 その“独自のスタイル”は、店構えから徹底されています。蕎麦屋とは思えないコンクリートむき出しのシンプルな外観はまるでデザイナーズマンション。目立つ看板や暖簾もなく、行列がなければお店があることに気づかないかもしれません。

店内

また、照明を絞った雰囲気のある店内はBarのカウンターのよう。黒と白を基調にした壁には、作中で何度もお店が描かれた漫画『島耕作』の原画がある以外はメニュー表示もなにもなく、店内中央には大理石製の大きな黒いカウンターが鎮座。その中心には水が張られ、季節に応じた植栽が飾られます。来店した客はこのカウンターテーブルを囲み、立ち食いスタイルで食します。

「どこかにあるような店ではなく、オリジナルな店を作りたいという発想からこのスタイルになりました」(菊地さん)。

道を究める人はオリジナルのスタイルを持っている

冷たい肉そば

港屋のメニューは「もり」「海苔もり」「胡麻もり」「海苔胡麻もり」「冷たい肉そば」「温かい鶏そば」の6種類。ラー油の入った甘辛いつゆに、揚げ玉と生卵をお好みで入れて食べるスタイルです。特に、そばの上に牛肉、ネギ、胡麻、海苔がどっさりと乗った「冷たい肉そば」は、港屋が生み出した新たなそばの食べ方として、ファンが大勢います。

「食材は日々アップデートしていますが、それ以外の部分はメニューも含め、開店以来何も変えていません。誰かの真似をする、ということが性格的に嫌なんですね。牛肉や鶏肉とともに、ラー油の入ったつゆで食べるそばは、港屋にしかありません」(菊地さん)。

お店作りで菊地さんがこだわるのが、この「絶対他にはないこと」「絶対誰もやっていないこと」の追求です。どこかの店で修行をしてしまうとその店のエッセンスや哲学に影響されてしまうから、と全て独学で今のスタイルを作り上げたといいます。

「教えてもらおう、という姿勢では、何かを突き抜けることはできないと思います。『好きこそものの上手なれ』じゃないですけど、どんな分野でも道を極める人って、皆さん独学でオリジナルなものを身に付けたと思うんです。野球でいえば一本足打法の王貞治さんやトルネード投法の野茂英雄さん、彼らは普通では考えられないフォームですけど、その道を究めています。道を究める人はその分野が好きだし、オリジナルのスタイルを持っています。自分はまだその域に達していないと思いますが、そうありたいと心がけています」(菊地さん)。

今後もメニューは増やさず、今のままのスタイルで続けていきたいと語る菊地さん。店の目の前には虎ノ門ヒルズも完成し、今後もますます行列は続きそうです。

今回取材したのは、具材にこだわりぬいた「めん」を提供するお店です。しかし、取材してみてわかったのは、具材へのこだわりはもちろんのこと、それ以上に、「他にはないお店にしたい」「この店でしか出せないメニューを作ろう」という、店のアイデンティティはどうあるべきか、という根っこ部分でのこだわりの強さでした。インタビューの中で「いいモノを作ろう、と続けると、どうやっても“本物”に戻る」という言葉がありましたが、店の方向性やテーマが明確であればあるほど、“本物”に辿り着き、多くの人々を惹きつけるのではないでしょうか。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2014年10月)のものです

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