遠方のお店まで足を運んだり、通販で取り寄せたりと、熱心なファンも多いベーグル。これまでにない特長のあるお店も登場して、特にトレンドに敏感なMZ世代といわれる10代~30代の若い方たちの間で、ベーグルの人気が高まっているようです。今回は、個性的なベーグルに注目が集まる専門店を取材。商品の魅力やバリエーションについてご紹介します。
eun bakery(イウン ベーカリー)
韓国の人気ベーカリーBakery tenがプロデュースするベーグル専門店。日本初進出の店舗として2024年12月にオープンしました。ふんわりもちもちした食感の韓国式ベーグル(Kベーグル)を楽しめます。
eun bakery(イウン ベーカリー)
- 住所
- 東京都世田谷区赤堤5-30-13
- 電話
- 非公開
- 営業時間
- 11:00~18:00 ※売り切れ次第終了
- 定休日
- なし

ふんわり、もちもち食感。デザートとしても楽しめるKベーグル


商店街に面したテイクアウト専門の同店。天気のよい日はテラス窓を開放して、明るい店内のカウンターにベーグルの数々が並びます。韓国式のベーグルにはどんな特長があるのでしょう。マネージャーの竹内里恵さんにお話を伺いました。
「韓国で人気のKベーグルは、単なる食事パンではなく、クラシックなベーグルとデザートの中間という位置づけです。ふんわり食べやすくてもちっとした食感、やさしい甘さのフィリング、そして見た目にもかわいらしいビジュアルなど、五感で感じられる豊かさと満足感こそが、私たちの考えている“韓国らしさ”です」(竹内さん)。
ぷっくりと膨らんで高さもあるベーグルは、ひと口食べたときに香ばしい風味とふんわりとした食感がバランスよく、噛むほどにしっとりとして弾力のあるもちもち感を楽しめます。ベーグルに使用する素材のバランスには特にこだわっているのだそう。
「生地の配合や発酵を細かく調整するほか、一般的なベーグルよりもケトリングの時間を短めにすることで窯伸びがよくなり、“しっとり・もっちり・ふんわり”の調和が生まれます」(竹内さん)。


売場に並ぶベーグルは9~10種類。シンプルな「プレーン」のほか、プレーンの生地にブルーベリーやオリーブ、くるみなどの素材を練り込んだフィリングなしのベーグルは、生地そのものの香ばしさともちもちとした食感を最大限に生かすようにつくられています。
フィリング巻き込み系は、芳ばしい韓国よもぎ生地にあんこを巻き込んだ「よもぎ」、ほろ苦いチョコレートフィリングをココア生地にたっぷり巻き込んだ「チョコレート」などがあります。濃厚なチョコ感と甘さを楽しめる「チョコレート」は、表面に振りかけたザラメ糖がキラキラとしてキュートな人気アイテムです。



ユニークなビジュアルに目が惹きつけられるのは「ガーリッククリームチーズ」です。
焼き上げたベーグルに放射状に切り込みを入れて、断面にガーリックバターを塗り、ガーリック風味のクリームチーズを絞り入れています。表面にはシロップを塗って艶やかさと甘みをプラス。Kベーグルならではの、ガーリックの香ばしさと甘じょっぱさのバランスがよく、クセになる味わいです。
丸いベーグルに四角いスライスチーズをトッピングした「ポテトチーズベーグル」は、フィリングには滑らかなマッシュポテト。じゃがいものほくほくとした食感と自然な甘みにコショウを効かせて香ばしく、食事として食べても満足感のある人気メニューです。
ベーグル+スプレッド、夏季限定でベーグルサンドも
「プレーンベーグル」は、生地そのもの香ばしさ、おいしさをシンプルに味わえます。ハチミツやクリームチーズを合わせたり、お好みの具材や料理と合わせたり、カスタマイズを楽しむのにもぴったりです。ベーグルと相性抜群なスプレッドは、「クリームチーズ」「ハニークリームチーズ」の2種類をカップに入れて販売。お店おすすめのスプレッドとベーグルの組み合わせは、店内パネルで提案しています。


冷たいものが食べたくなる暑い季節には、10月末までの期間限定でベーグルサンド6~7種類を冷蔵ケースで販売しました。
「アイテムによってフレーバーを変えたクリームチーズに、チーズケーキなどの洋風の焼菓子、あんこや白玉など和のお菓子、フルーツなどの具材をバランスよく組み合わせてたっぷりと挟み、見た目にも楽しく、ひと口で幸せを感じていただけるように丁寧に仕上げています」(竹内さん)。
さまざまな具材が重なり合って華やかな層を描くサンド、コロンとかわいらしいフォルム、仕上げのシロップで表面に艶を加えたり、ユニークなトッピングを施したりと、ビジュアル面でも「かわいい」要素がちりばめられているのも韓国ベーグルの魅力です。
「私たちはベーグルを単なるパンではなく“見ているだけで気分が上がるパン”にしたいと考えています。フィリングの量やトッピングのバランス、色味の組み合わせなど、ビジュアル面でも細かなディテールを大切にして『かわいい!』『写真を撮りたい!』と思っていただけるようなベーグルづくりを目指しています」(竹内さん)。


韓国発のカルチャーを好む方やSNS映えを意識する若い世代はもちろん、最近では、ご近所の年配のお客様が「ベーグルなのにやわらかくてとても食べやすい」とリピートしてくださることも増えたそう。
「韓国式の新しいベーグルを日本でも気軽に楽しんでいただけます。まだ食べたことのない方にも韓国で味わったという方にも、心を込めてつくりあげるイウンベーカリーのベーグルを多くの皆様にお届けできたらと思っています」(竹内さん)。
ベーグリアン(下田流)
個性的なベーグルが人気の「BOULANGERIE KEN」で修業した下田鴻さんが独立して、ベーカリー「下田流」をオープン。2024年5月から毎週水曜日は、ベーグルに特化した「ベーグリアン」として営業しています。
ベーグリアン(下田流)
- 住所
- 東京都板橋区高島平7-26-4
- 電話
- 非公開
- 営業時間
- 7:30~17:00 ※売り切れ次第終了
- 定休日
- ベーグリアンは水曜のみの営業、下田流は月曜定休。

ベーグルの枠を超えた個性的なラインアップ


「下田流」でも数種類のベーグルを販売していますが、それとはまったく別に、新しいベーグルをつくろうと思ったことが「ベーグリアン」誕生のきっかけ、と語るのは代表の下田鴻さんです。
「ベーグルには根強いファンが多く、一時の流行に流されずに専門店として長く続いている店も多い、という実感がありました。『下田流』とは別に新店舗をつくる、という選択肢もあったのですが、同じ店舗で水曜日だけのベーグル専門店という、このスタイルに着地。ベーカリーの設備を生かし、パンづくりの技術と考え方をベーグルに落とし込む、という強みがあります」(下田さん)。
「ベーグリアン」をはじめるにあたって絶対に外せないアイテム、として開発されたのが「クロワッサンベーグル」です。
「私自身、むぎゅむぎゅと硬くて噛むのに苦労するようなベーグルが好きではなくて、バリっと硬いけれど歯切れがよく、バター感があってベーグルならではのひきも楽しめるものをめざしました。ベーグル生地にバターを折り込んで層をつくり、普通のベーグルのようにお湯でゆでるとバターが流れてしまいますから、コンベクションオーブンで“蒸し”の工程後に焼き上げています」(下田さん)。


ミニ食パンのようなベーグルは「スチームブレッド」です。独特な製法で仕込んだバター入りの生地を丸めてケトリングしてから型に入れて焼き上げています。発酵により食パン寄りのふんわり感を出し、ケトリングでベーグルらしい、ほどよくむちっとした食感も備えたハイブリッドなおいしさです。
スチームブレッドにあんことバターをはさんだ「あんバターサンド」も好評です。
よもぎを練り込んだ生地にあんことおもちを巻き込んだ「よもぎもちベーグルあんパン」は、しっとりと吸いつくような生地のもち感が際立ったベーグル。コンベクションオーブンでスチームをかけながら蒸し焼きし、焼き上がりの熱々のまま急速冷凍庫に入れて、表面を一瞬で凍らせることで、中に水分や香りを閉じ込めているそう。


アイテムごとに食感には特長があり、プライスカードの横には格闘ゲームの能力値のイメージで、特長をスケール表示してあるのもユニークなところです。


仕上がりから逆算して最適の生地をつくる

ベーグルのバリエーションは、プレーン生地に素材を練りこんだり、フィリングを巻き込んだり、という方向だけではなく、つくりたいベーグルから逆算して、粉の配合からミキシング、発酵やケトリング、焼き方を変えて、今までになかった食感や味わいを生み出しています。生地は17種類にもなるそう。
ベーグリアンのプレーンベーグルは、自家製酵母を使った「サワードゥベーグル」。加水は多め、ケトリングはやや長めにして、中はぷるぷるとみずみずしくてやわらか、うま味が強く、酸味は抑えて食べやすくしています。「プレーン」のほかに雑穀をトッピングしたバージョンもあり、どちらもサンドイッチにもピッタリのベーグルです。
このほか、アールグレイ生地、抹茶生地、チョコレート生地、トマトやほうれん草などの野菜系の生地など、それぞれ粉の配合から変えているそう。おかず系の具材を包んだ惣菜ベーグル、甘いフィリングを包み、ダマンド生地をかぶせて焼き上げたアイテムなど、バリエーションは多彩です。
具材たっぷりのベーグルサンドにも、具材に合わせてさまざまなベーグルが使われます。「ほうれん草サーモンくん」は、ほうれん草のペーストをたっぷり練り込んでいて色鮮やか。このやわらかくて伸びるようなほうれん草生地のベーグルに、スモークサーモン、風味のよいアンチョビクリームチーズをたっぷりサンドしています。



自家製のチーズケーキやクッキーなどをはじめ、さまざまな具材の組み合わせを楽しめるスイーツ系のサンドも好評です。例えば「アールグレイフィグノアレアチーズケーキベーグルサンド」は、やわらかな食感のアールグレイベーグルに、赤ワインに漬けたドライいちじく入りのクリームチーズ、全粒粉入りくるみのクッキー、レアチーズケーキをサンドした、ほかにはないべーグルサンドです。
「秋ならいちじくとかさつまいもとか、その季節らしい素材を使い、それに合わせて、ほかではあまり見ないけれど、これだったら絶対に合いそう、という具材の組み合わせをみつけています」と語るのは、サンドを担当するスタッフの小豆ちゃん。
焼き菓子類は、ほかの具材と合わせたときにちょうどよい甘さになるようにベーグル専用につくっています。大きくて食べ応えのあるベーグルサンドに、ナッツ入りのクッキーなどで食感のアクセントを添えることも大切にしているそう。
「パンという枠だけにとらわれずに、今までになかった新しいおいしさを生み出していきたいと考えています。おいしくつくるための条件には、例えばクリームパンなら、パンとクリームを同じくらいの柔らかさにするなど、経験からすぐに出てくる答えもありますが、自分の中にあるイメージを打ち破って、挑戦的な商品づくりをやっていきたいです」(下田さん)。
NEW NEW YORK CLUB THE BAGEL CAFE AND BEER STAND
(ニュー ニュー ヨーク クラブ ザ ベーグル カフェ アンド ビア スタンド)
麻布十番にあるNYスタイルのハンドメイドベーグルとベーグルサンドの新店舗として、2025年3月赤坂にオープン。広々とした店内にはカフェを併設し、さまざまなベーグルとともにトッピングやスプレッドを多数揃え、オリジナルのクラフトビールも楽しめます。
NEW NEW YORK CLUB THE BAGEL CAFE AND BEER STAND
(ニュー ニュー ヨーク クラブ ザ ベーグル カフェ アンド ビア スタンド)
- 住所
- 東京都港区赤坂2-10-5 赤坂日ノ樹ビル 1F
- 電話
- 03-6459-5669
- 営業時間
- 火曜~土曜カフェタイム8:00~17:00、ビアタイム17:00~22:00、日曜、月曜カフェタイム8:00~17:00
- 定休日
- 不定休

ベーグル×スプレッド×トッピングでカスタマイズも


店内のショーケースには当日の朝焼き上げたベーグル、冷蔵ケースには、クリームチーズなどのスプレッドやサーモン、フレッシュな野菜などサンドイッチの具材が並びます。オーナーの振角勇輔さんにお話を伺いました。
「日本のベーグル店は、中にいろいろな具材を巻きこんだものや、華やかな断面が映えるサンドなど、できているものをそのまま販売するスタイルが主流になっています。当店では、シンプルにベーグル単体で楽しんでいただくこともできますし、お好みでチョイスしたスプレッドや具材(トッピング)をお客様の目の前でベーグルサンドに仕立てる、ライブ感のあるNYスタイルを主軸にしています」(振角さん)。
ベーグルのラインアップは18種類。どれも表面はパリッとして小麦が香り、中はむっちりと詰まって、ほどよいひきがあります。たっぷりのサイズで食べ応え満点のベーグルです。小麦粉を主原料にした「プレーン」をベースに、さまざまなトッピングを施したり、素材を練り込むことでバリエーションを展開しています。


なかでも、NYのべ―グル店には必ずあるのが「エヴリシング」。セサミ、ポピーシード、ガーリックチップ、オニオンチップ、塩をトッピングした芳ばしさが魅力です。アメリカではポピュラーな肉や魚料理との相性も抜群のミックススパイス「エヴリシングスパイス」は、このNY定番ベーグルが由来といわれています。
プレーン生地に素材を練り込んだタイプとしては、「ブルーベリー」「ラズベリー」「シナモン&レーズン」「レモンソルト」「アップルシナモン」などをラインアップしています。
全粒粉を配合した「ホールウィート」、同生地にオートミールとはちみつをトッピングした「オーツハニー」は、穀物感とやさしい甘みを楽しめます。
小麦粉とライ麦粉にキャラウェイシードを合わせた黒い色のベーグルは「プンパニッケル」。生地に卵を練り込んで、軽めで少し甘みのある「エッグ」とともに、NYではポピュラーなベーグルです。


グルメバーガー風のごちそうサンドや週末限定のセットも魅力
ベーグルサンドは、迷わずオーダーできるように決まったメニューが8種類あるほか、スプレッドや具材を自由に選んでカスタマイズも可能です。朝の開店時からベーグルや具材が売り切れるまでオーダーできます。
「オフィス街にある店なので、1日のスタートには手づくりのベーグルとスペシャリティコーヒーで上質な朝食、ランチタイムには自家製のローストビーフやパストラミビーフなどをはさんだ食べ応えのあるサンドイッチ、1日の締めくくりにはクラフトビールと、街の人の1日に寄り添った使い勝手を提案しています」(振角さん)。


サンドイッチのメインの具材で、ローストビーフ、パストラミビーフ、プルドポークはいずれも自家製。パストラミビーフは1週間かけて塩とスパイスに漬け込み、燻製をかけています。魚系では、スモークサーモンのほか、期間限定でスモークニシンのサンドイッチも登場しています。サンドイッチメニューはお好きなベーグルをチョイスして、どれも具材たっぷりでグルメバーガーのようなごちそう感とボリューム感を楽しめます。
土日祝日限定で登場するのが「ベーグル&アペタイザーセット」です。お好みのベーグル4個と、スモークサーモン、フレッシュ野菜、スプレッド4種を2段のスタンドにセット。ドリンク2杯付きで、2~3人で楽しむことができます。



「平日とは客層が変わり、わざわざ来てくださるお客様が大半なので、ゆっくり楽しんでいただけるメニューとして提案しています。皆さん、思い思いに具材をもりもりに挟んだサンドにしたり、ベーグルとスプレッドの組み合わせをいろいろ試してみたり、楽しんでいただいています」(振角さん)。
NY好きが高じて、同地の象徴的なフードであるベーグルの店をはじめたという振角さんは、定期的に現地を訪れ、さまざまなベーグル店と交流して情報をアップデートしているそう。
「NYのベーグル店はクリームチーズの種類が多く、ジェラート店のケースみたいにいろいろなフレーバーが並んでいます。また、近年はパンと同様にサワードゥのべ―グルが流行っていますし、ベーグルのオープンサンドを出すお店が増えています」(振角さん)。
「ベーカリーの惣菜パンや菓子パンのように、買ってきたものをそのまま食べるのではなく、ベーグルはリベイクしてこそ本来のおいしさが生きてきます。スプレッドをつけたり、ハムや野菜、アメリカンBBQの肉料理などをサンドしたりと、いろいろな食材と合わせて食べるというフードカルチャーも伝えていきたい。うちのベーグルがきっかけになって、NYに行ったときにもベーグルを食べてみた、現地で食べたのを思い出した……そんな場になれたらうれしいです」(振角さん)。
やわらかくてもちもち、ビジュアルもキュートな韓国式ベーグル、パンとベーグルがクロスオーバーしたような新感覚のベーグル、そしてベーグル人気の原点ともいえるNYベーグルと、ベーグルの世界はいちだんと広がりを見せています。皆様の商品開発の参考にされてみてはいかがでしょう。
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2025年10月)のものです。最新の店舗情報は、別途店舗のHP等でご確認ください。
