正統派の江戸前天丼とそれに合うラーメンの組み合わせで人気を博すのが「天丼らぁ麺ハゲ天 銀座店」。創業90年の歴史を誇る天ぷらの老舗「銀座ハゲ天」が、人気博多ラーメン「一風堂」を運営する力の源グループと共同開発して展開する新業態です。
天ぷらの老舗「銀座ハゲ天」が創業からちょうど90年を迎えた2018年3月、文化と流行の発信地、銀座にオープンしたのが『天丼らぁ麺ハゲ天』です。オープン以来、サラリーマンはもちろん、若い世代や外国人客など、幅広い層から支持を受けているこの店の狙いを、銀座ハゲ天の関東店舗営業部課長、佐野龍昭さんにお聞きしました。
「天ぷらは海外でも人気の日本の伝統文化です。その反面、日本人のなかでも“敷居の高い食べ物”と思われがちで、若い世代では食べ慣れていない人もいらっしゃいます。そんな若い世代、さらには外国人に向けて、カジュアルに、気軽に天ぷらを楽しんでもらえる場をつくりたいという思いから、若い世代はもちろん、海外でも人気の“ラーメン”と組み合わせる新業態の開発に着手しました」
“天ぷらに合うラーメン”というテーマで商品開発の協力を依頼したのは、人気博多ラーメン「一風堂」などを運営する力の源グループです。
「まず、天ぷらとラーメンがそもそも合わせられるのか? その部分で、スープの完成までには半年以上何度も議論を続け、試作を重ねました。結果、辿り着いたのはただの豚骨スープではなく、胡麻を利かせた“胡麻豚骨スープ”。『豚骨と天ぷら』と聞くと『えーっ!?』と思われがちなんですが、食べてみるとスープまで全部飲み干せてしまうほどよく合っているんです」
そのスープとあわせる麺も、何度も試作を重ねたといいます。
「当初、最近人気の多加水麺がいいのかなと考えていましたが、力の源グループさんからご提案いただいたのは低加水の細麺。ツルツルとした食感で、同じグラム数でも麺を細くすることでするりと食べやすい。そういった工夫もあって女性客でも一人前をペロリと召しあがりますね」
「天丼らぁ麺ハゲ天」で提供する天丼は、「天丼」(980円)、「天丼(上)」(1230円)、「かき揚げ天丼」(1080円)、「野菜天丼」(850円)の4種類。ラーメンは、「胡麻豚骨らぁ麺」(980円)と「胡麻担々麺」(1080円)の2種類。麺単品の場合、トッピングとしてチャシュー天2枚、紅生姜天1枚、海苔天1枚が付いてきます。
一番人気はセットメニューの「天丼とらぁ麺」(1380円)で、他にも「天丼(上)とらぁ麺」(1630円)、「かき揚げ天丼とらぁ麺」(1480円)、「野菜天丼とらぁ麺」(1250円)といったセットメニューを用意。もちろん、こだわりの天ぷらはハゲ天として長年に渡って創意工夫を重ねてきた逸品です。
「ハゲ天の天ぷらは卵たっぷりの薄めの衣、季節に応じて油の配合を変える特製ブレンドのごま油を使ってカラリと揚げています。天ぷら=脂っこい料理、というイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、当店の天ぷらはごま油も含め、品質にこだわったヘルシーな料理だと自負しています。天ぷらとラーメンの組み合わせ、ということで健康志向の方は『食べていいのかな?』と思われるかもしれませんが、その部分はしっかり訴えていきたいと思います」
実際、若い女性客もひとりで来店することが多いという「天丼らぁ麺ハゲ天」。内装もカジュアルで清潔感に溢れているからか、他店舗以上に若い世代の集客に成功しています。
「昼は女性も含めサラリーマン客が多く、14時半を過ぎると夕方までは外国人客が多くなり、夜からはまた仕事帰りのサラリーマンがいらっしゃいます。アイドルタイムがないのがこの店の強みかなと思います。これからも、幅広い層に向けて、日本の食文化である『天ぷら』の魅力を訴えていきたいと思います」
「埼玉県のソウルフード」とも称され、熱狂的な人気を誇る『山田うどん』が新業態『県民酒場ダウドン』を2017年12月にオープン。おなじみのうどんメニューはもちろん、ダウドンだけのオリジナル料理や豊富なドリンクメニューが味わえます。
案山子の黄色い看板でおなじみ、埼玉を中心に展開する人気うどんチェーン店「山田うどん」。ファンからは「俺たちのダウドン」と呼ばれ、コアなファンを獲得しています。そんな山田うどんが、ファンたちの呼び名“ダウドン”を店名に掲げて新たにオープンしたのが「県民酒場ダウドン」です。
「当社はこれまで『山田うどん』一辺倒。おかげ様で週に何度も来ていただけるヘビーユーザーも多くいらっしゃいますが、第二の柱になるものもそろそろ立ち上げなければ、と考えていました。というのも、従来の山田うどんでは、なかなか女性がひとりでは入りにくい雰囲気もあったかなと。ならば、新しいブランドでスピーディに展開したほうがいい、と誕生したのが『県民酒場ダウドン』なんです」
取材に応えてくれたのは山田うどんの広報担当、営業企画部部長の江橋丈広さんです。
「もともと、山田うどんでも人気の『パンチ』(もつ煮込み)や『餃子』といったメニューをお酒と一緒に楽しみたい、というご要望はありました。そういった人気メニューにさらにひと手間加えて、埼玉の地酒や4種類もあるこだわりのレモンサワーといったお酒とともに楽しんでいただく。そんな“進化した山田うどん”を目指しています」
ひと手間とは、パンチであればこれまで器に盛って提供していたのを、親子鍋でアツアツの状態で提供すること。餃子であれば鉄板羽根つき餃子にし、酢と醤油とラー油ではなく、特製のダシ酢(濃縮したうどん汁と酢を1対1で割った調味料)と柚子胡椒で食べるのが“ダウドン流”。サッパリとした味わいはお酒との相性もバツグンです。
ダウドンでは、山田うどんの命ともいうべき“うどん”に関しても、従来店とは異なる工夫と味わいが施されています。
「麻辣うどん(680円)、特撰カレーうどん(600円)、とろ玉うどん(490円)、それと特製焼きうどん(590円)もこれまでは出してないメニューですね。ウドンに関しては、単体で食事としても美味しく、また、お酒のアテにもなるような味を目指してメニューに加えています。また、ざるうどんは山田うどんでも提供しているメニューですが、麺が違うんです」この、“麺の違い”が、実は従来の山田うどんとの大きな差別化です。
「山田うどんといえばやわらかな麺が特徴、といわれて馴染んでいますが、新しいことにチャレンジがしたいというコンセプトのもと、『ダウドン』のうどんでは全て、コシの強い麺を提供しています。また、その麺に合わせて、汁に関しても従来よりも出汁感を強めています。そして、山田うどんでは去年から、麺で使用する小麦粉を全て国産に変えました。そういった素材のこだわり、国産小麦粉へのこだわりは『ダウドン』でも継続して続けております」
元々、仕事帰りの30〜50代のサラリーマン層をターゲットにしていた「県民酒場ダウドン」。実際に開店してみると、土日のファミリー層が多い、ということに驚いているといいます。
「通常、夜の業態では土日の集客に苦労すると思うのですが、ここでは非常に土日がいいですね。家族連れでいらっしゃって、子どもは食事、大人は昼間からお酒、というオーダーが多いです。また、高齢者の方からもご愛顧いただいています。そこで、開店当初、メニュー表は酒場の雰囲気を出すために文字だけのものにしていたんですが、写真付きにしてどんな料理か想像しやすいものに変更しました。商売って、ずっと同じ物を売っているようでも、実はそうではありません。日々、ちょっとした変化を意識してないと、知らずと飽きられてしまうものだと思います。素材にしても、味にしても、サービスにしても、お客様に気付かれずに変わっている、そんな店づくりをこれからも目指していきたいと思います」
※店舗情報及び商品価格は取材時点(2018年9月)のものです