パンで、どのように人と人を繋げるのか。

こちらのお店の店主、辻 加世子さんは、医師を志していましたが、「医食同源」の考えからパン職人の道へ転身しました。
店主・辻さんが目指すのは、「パンを通して人と人を繋げること」。
実際にお店を訪れてみて気づいたのは、辻さんのパンがどれも一つひとつが大きいことです。
そこには、しっかりとした理由がありました。

なぜパンを大きくしているのか。
それは、ひとりで食べきるためではなく、パンをカットして家族や友人とシェアしてほしいからです。
みんなで同じパンを囲み、「これ美味しいね」と感想を言い合いながらおいしさを分かち合う。
その瞬間に会話が生まれ、食を通して人と人とが繋がっていくのです。
また、大きなパンは一度に食べきれないことも多く、自然と保存方法をお店のスタッフに尋ねる機会が増えます。
そこでも、お客様とお店の“人”との間に会話が生まれ、つながりが生まれます。

さらに、店内のパンの説明POPには、生産者の詳細があえて書かれていません。
それは、お客様自身が興味を持ち、スタッフに尋ねたり、自分で調べてみたりして、能動的に生産者と関わってほしいという想いからなのです。
フランスでは、お客様が自ら口にする食材に意識を向け、生産者を訪ねることが日常的なのだそうです。
辻さんは、パンを通してそうした意識の芽を広げたいと考えています。

「パンを食べることは、ただの食事ではなく、“医食同源”の考えにもつながる」。
そんな辻さんの想いが、一つひとつのパンに込められているようでした。食べる人、つくる人、そしてパンという存在。
それぞれの点が、辻さんの手によって一本の線で繋がっていくのです。

青じそバジルチキン

北海道産小麦・北海道産全粒粉・ドイツ産ライ麦を使用。
酵母は、すべてのパンで小麦から起こしたルヴァン種を使っています。
具材には、愛媛県産の浜千鶏を使用。地元の新鮮な鶏肉にこだわっています。
さらに、大量の大葉を加えることで、香りと風味を豊かにしています。

ひと口食べると、パンはもちもちの食感。表面にはたっぷりのチーズがかかっており、溶けてガリガリ食感に。
濃厚で香ばしいチーズの風味が広がり、思わず白ワインが欲しくなるおいしさです。
中には鶏もも肉がたっぷりと入り、驚くほど柔らかくぷりっとした食感。
大きめサイズで食べ応えがあり、満足感も抜群です。
さらに大葉の爽やかな香りがアクセントとなり、全体のバランスを引き締めています。

アップルベリーとオレンジピスタチオローストクルミ in クリチ

「一つのパンで、すべての栄養素が摂れる！」——そんな想いから生まれたパンです。
カナダ産小麦をベースに、灰分値の高い小麦粉をブレンド。
砂糖を使わず、自然な甘みを引き出すために、生地には牛乳を約8割使用しています。
加水率はなんと120%。しっとりとした口当たりが特徴です。具材には、青森県産りんご「宝玉」とフランス産クリームチーズを使用。さらに、くるみ・ピスタチオ・マカダミアナッツ・アーモンドといった4種類のナッツを、生地量の約4割も加えています。

クラスト（外側）はパリッと香ばしく、ほんのりほろ苦い風味。一方で中の生地はふかふかで、食感のコントラストが楽しめます。
大きくのったりんごはとてもジューシーで、フルーツ本来の甘みが際立ちます。
シナモンの香りがふわっと広がり、クリームチーズのほどよい酸味が全体のアクセントに。

さらに、オレンジピールとクランベリーが爽やかな甘酸っぱさを添え、ナッツ類のコリコリとした食感が香ばしさを引き立てます。具材がたっぷりと入っており、ひと口ごとに異なる味わいが楽しめる——
まさに「身も心も満たされる」満足感の高い一品です。

いちごベーグルサンド

北海道産小麦を数種類ブレンド。それにより、引きが強すぎず、ほどよい弾力で噛みちぎりやすい食感に仕上げています。この絶妙な食感が、チョコレートの風味をより引き立てているそうです。
使用しているチョコレートは、フランス産ヴァローナ社のもの。香り高く、深みのある味わいが魅力です。

パン生地はもちふわ食感で、口に入れるとダークチョコのようなほろ苦さが広がります。甘すぎず、上品で大人のチョコベーグルです。中にはクリームチーズが入っており、そこに苺ジャムを合わせることで、まるでヨーグルトのようにクリーミーで爽やかな味わいに。さらに、フランボワーズやすぐりといったベリー類もたっぷり入っており、甘酸っぱさがチョコのコクを引き締めています。ひと口ごとに、チョコの深み・チーズのまろやかさ・ベリーの酸味が重なり合う、贅沢な一品です。