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2020年06月10日[茨城]

フードバンク茨城水戸支部にSOS急増、寄付やボランティア呼び掛け

フードバンク茨城水戸支部にSOS急増、寄付やボランティア呼び掛け

 NPO法人「フードバンク茨城 水戸支部」(水戸市元吉田町、TEL 029-297-1477)で現在、勤務先の営業自粛などで収入がなくなった人たちからのSOS相談が急増している。

 「フードバンク」は、賞味期限内で安全に食べられるのに包装ミスや返品などの理由で、流通させることができない食品を家庭や企業などから無償で提供を受け、必要としている施設や団体、困窮(こんきゅう)世帯に無償で提供する活動。

 同団体は2011(平成23)年3月に牛久市で「フードバンク茨城」として設立。寄贈された食品の仕分けや各種施設などへの配達、公共施設やスーパーなどへの「きずなBOX」設置、フードバンクセミナー開催などを行っている。2019年9月現在、「フードバンク茨城」と「食品取り扱いの確認書」を取り交わしてしている社協・自治体は、県内44市町村のうち39市町村。水戸支部では、県央・県北地区を対象に支援活動に取り組んでいる。

 水戸支部の田中健一さんは「新型コロナの影響による勤務先の営業自粛や母子家庭で働けない人が増え、社協経由の食料品支援要請のほか、個人からの問い合わせも増えている」と話す。水戸支部の渡辺園子さんによると、6月3日時点で支援の問い合わせは昨年の同時期の3倍に急増。社協・自治体を通した「命をつなぐ」支援として食料品の配達や発送の手配を進めているという。

 5月20日、水戸市栄町から元吉田町に移転した同支部。田中さんは「自治体などからの支援を受けて活動していると思われがちだが、フードバンクの活動はボランティア。ただただ『困っている人に届けたい』『困っている人を助けたい』という思い」と胸の内を明かす。「各地への配達もボランティアの自家用車で行い、物件も食料品が多く保存できる広さや収納のある場所を厚意で安く貸していただいている状況」とも。渡辺さんは「増加する困窮者の状況もすぐに変わるわけでなく、第2波、第3波などの状況でどうなっていくかというところ。依頼の増加で、ボランティアの負担も大きく、人材の不足も課題」と話す。

 渡辺さんは「寄付する方みんなが裕福なわけではない。家族には『いき(ぎ)もねえ(茨城弁で必要ないの意味)』と理解されないが、自分は昔、ひもじい思いをしたからと、食べるコメの量を減らして少しずつためたコメを2時間近く掛けて寄付を届けに来てくれる人もいる。一つ一つの寄付の中にはそれぞれの思いが込められている。決して『いきもねえ』ことなんかではない」と語を強める。「私たちの活動には、目先の見返りはないかもしれない。それでも、長い目で見たとき、食べ物に困っている人がいない地域になっていけたら、まちも明るくなっていくはず」と期待を寄せる。

 田中さんは「公的支援の中で、食の支援はほとんどなく、民間が集めて配るという現状がある。市民活動を生かし、社協や自治体が地域の企業、私たちのような団体と垣根を越えて連携することで新しいモデルが生まれ、弱者に優しい県政にもなっていくのではないか」と話す。「食品ロスという切り口の中で、困窮者支援の側面もある。2019年の法律改正で損金として計上できるようになったことから、企業からの寄贈は増加しているが、資金面やボランティア人材の不足もある。自治体などはもちろん、地元の企業や若い人たちにも力を貸していただけたら」と呼び掛ける。

 水戸支部では現在、食料品の寄付やボランティアスタッフを募集している。問い合わせは、メールと電話・ファクス(共通 029-297-1477)で受け付ける。
(水戸経済新聞)

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