
「竹谷さんだから聞けるパン職人の理想と挑戦」。今回お話をお伺いしたのは、東京都八王子市南大沢にある人気店「Cicoute Bakery(チクテベーカリー)」のオーナー・北村千里さん。2000年に自宅1階で始めたパンの卸しと配送専門店が話題となり、2013年に南大沢に移転。移転後も人気は衰えることなく右肩上がり。そんな彼女のパン職人の人生はどのようなものなのでしょうか?パンづくりをはじめたきっかけから、今のこだわりに行き着いた訳、そして今後の展望などを伺いました。
- 竹谷
- 本日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。
- 北村
- 何度かお会いしていますが、このような形でお話するのは初めてでとても緊張します。本日はよろしくお願いします。
- 竹谷
- 美大出身とお伺いしました。そこからどのようにパン職人へと進んで行ったのですか?
- 北村
- 美大では陶芸を専攻していました。よく考えるとパンづくりと陶芸は近いものがあるとも思いますが、その時は「パン職人」という職業に就くとは思ってもいませんでしたね。
- 竹谷
- 美大からパン職人へという方は珍しいので、きっかけが気になりますね。
- 北村
- 卒業後は映像系の仕事に就きたいと思っていて、アルバイトでテレビ番組の手伝いをする機会がありました。そこでディスプレイ用にパンを使ったことがあったんです。ちょうどその頃、アルバイトではなくしっかりとした職に就きたいと考えていた時期でもあり、そのパンを見て「これだ!」と思ったことがきっかけです。
- 竹谷
- そのディスプレイ用のパンとの出会いがこのようなステキなお店のオープンに繋がっているとは驚きですね。
- 北村
- そうですね。その時のディスプレイ用のパンは大きなもので、パンの人を惹きつける魅力、力はすごいなと感じたことを今でも覚えています。
- 竹谷
- そんなきっかけからどちらで修業をされたんですか?
- 北村
- 「アフタヌーンティー」のベーカリーにアルバイトで入りました。未経験でも生地を触ることができる現場だったのが決め手です。ただ、パンをつくった経験はなかったので、ある日先輩から「これで勉強してみたら?」と本を渡され、そのなかの1冊が竹谷先生の「新しい製パン基礎知識」でした。
- 竹谷
- 読んでいただいたんですね。
- 北村
- 今でも大切に持っていますよ。しかし、当時は読んでも全く理解できなくて、分からないところは先輩に聞きながら勉強していました。




- 竹谷
- パンづくりに触れたお店は自家製酵母のパンをつくっていない場所だと思いますが、どんなきっかけで自家製酵母に出会ったのですか?
- 北村
- 色々と食べ進めて行くうちに、粉、塩、水でつくるシンプルなパンが好きだとわかりました。竹谷先生の本を薦めてくれた先輩から「きっと好きだと思うから勉強してみたら?」と自家製酵母のパンについても教えてもらいました。
- 竹谷
- 存在を知ってから自家製酵母のパンも食べてみましたか?
- 北村
- はい。友人から甲田幹夫さんが営む「ルヴァン」という自家製酵母のパン屋さんがあると聞き、はじめて自家製酵母パンを食べたのがここですね。とても衝撃を受け、ここで働きたいと何度も通いました。でも、タイミングが合わず雇っていただくことはできなかったのですが、今でも大好きなお店ですね。
- 竹谷
- その後はどちらで修業されましたか?
- 北村
- その後は原宿にあったパン屋さんで1年間ほど働きました。国産小麦を使用し、自家製酵母パンを扱っていたことが決め手です。ただ、勤務体系が厳しい現場だったので勉強する暇がないほどでしたね。そのため1年間ほどで退社し、鎌倉の「cafe Takaraya(現:KIBIYAベーカリー)」に転職しました。そこでやっと本格的に自家製酵母のパンを学ぶことができました。
- 竹谷
- 転職先を「cafe Takaraya」に決めたのはどうしてですか?
- 北村
- 私はカフェとベーカリーを友人と一緒に経営したいという夢を持っていました。「cafe Takaraya」は、老舗パン屋ではあるのですが、2代目のオーナーに代替わりしてからは、規模を縮小して女性2人で営んでいる様子が、自分の夢と重なって、ここならば色々と学ぶことができると働くことを決めましたね。
- 竹谷
- 修業時代からしっかりと現在のビジョンが見えていたんですね。
- 北村
- 「cafe Takaraya」で働きながら、自宅でパンづくりの勉強も進めていました。やはり自分のつくりたいパンは、どんなものがいいのかしっかりと考えてから焼き上げたいと思ったんです。



