
「竹谷さんだから聞けるパン職人の理想と挑戦」、今回は東京都世田谷区の「ブーランジェリー コシュカ」のオーナーシェフ・秋元さんにお話を伺いました。秋元さんは6軒のパン屋さんで修業経験があり、それぞれタイプの違う師の元で働きました。そのことが秋元さんにとってどんなに大きなことだったのか、独立までの経緯、今後の課題、目標などを交えて語っていただきました。
- 竹谷
- 本日はよろしくお願いいたします。
- 秋元
- こちらこそよろしくお願いします。パン業界に入ったばかりの頃は、竹谷さんとこうしてお話する機会をいただけるとは思っていませんでした。大変ありがたいです。
- 竹谷
- 早速ですが、パン職人になったきっかけを教えてください。
- 秋元
- 17歳の時にラーメン屋とパン屋でアルバイトをしていました。どちらになろうかと考え、もともとパンを食べることが好きだったのでパン屋を選びました。
- 竹谷
- 今までの経歴を教えてください。
- 秋元
- どこで修業しようかと考えていたところ、知人の紹介で偶然にもJPB(Japan Professional Bakers)友の会の代表幹事も務め、当時はロイヤルパークホテルのシェフであった中村四郎次さんに出会いました。中村さんに勤め先として『ベッカライ シャラント』と『ベッカライ ブロートハイム』の2店舗を紹介していただきました。ところが、『ベッカライ ブロートハイム』は、修業開始までに1年間待たなければならない状態。当時、すぐにでも働きたいと思っていたこともあり修業をすぐに始められる『ベッカライ シャラント』を選びました。そして、オーナーの竹内豫一さんの元で1年弱勤めました。「これぞ職人!」といった竹内さんの元での修業は、厳しいものでしたが今考えるととても貴重な体験だったと思っています。また、このときパンを勉強するならと渡されたのが竹谷さんの著書『新しい製パン基礎知識』でした。
- 竹谷
- 『ベッカライ シャラント』の後はどのような経験をされましたか?
- 秋元
- その後『ルノートル』へ転職し、中目黒の工場などさまざまな店舗で7年程修業しました。2、3年勤めた時に「もっと勉強しなくてはダメだ」という意識が芽生え講習会に参加しはじめました。働き始めた頃は講習会の存在も知らなかったのですが、パンニュースの方と知り合ったことで講習会情報を教えてもらえ、開催日程に合わせて休みを取り、参加するようになりました。
- 竹谷
- 講習会には本当によく参加されていましたよね。
- 秋元
- 講習会では『ベッカライ ブロートハイム』の明石克彦さんや『シニフィアン・シニフィエ』の志賀勝栄さん、『デイジイ』の倉田博和さんなど今でもお世話になっている方々に出会うことができました。志賀さんには『ペルティエ』を立ち上げる時に「一緒にやらないか?」と、お誘いをいただいたときは尻込みしましたが、今では行って良かったと思っています。
- 竹谷
- 『ペルティエ』の後はどのような経験を積まれましたか?
- 秋元
- その後3ヶ月ほどフランス・ドイツを訪問。帰国後に明石さんのお店『ベッカライ ブロートハイム』に6ヶ月程お世話になりました。その後、当時『mikuni MARUNOUCHI』でシェフ・ブーランジェを務めていた田中聡さん(現在は『Boulangerie CALVA』オーナーシェフ)からお話を頂き『mikuni』に就職しました。ここでは料理にも触れることができたので、すごくいい経験ができました。その時にできた料理人との繋がりは今でも大切にしています。
- 竹谷
- タイプの違うお店で色々な経験をされていますね。
- 秋元
- 人との繋がり・出会いには本当に恵まれたなと思っています。




- 竹谷
- 現在お店をオープンして8年目ですね。さまざまなパン業界の人との関わりの中で自分のパンは見えてきましたか?
- 秋元
- なかなか難しいですね。お店のオープン前にも頭が真っ白になってしまい開店を諦めかけたことがありました。自分の思い描いたパンができなかったんです。
- 竹谷
- 私もお店をオープンさせた時は大変でした。どうやって乗り越えられたのですか?
- 秋元
- 明石さんに「諦めようかと思っている…。」と相談したところ「諦めるな、はじめはみんな上手くいかない。失敗してもいいからやり遂げなさい。」と励ましの言葉をいただき何とかオープンまでこぎつけることができました。開店後も明石さんからはいろいろな助言をいただいています。
- 竹谷
- 『ベッカライ シャラント』竹内さんの職人堅気、『シニフィアン・シニフィエ』志賀さんのカリスマ性、『ベッカライ ブロートハイム』明石さんの汎用性。そういった方々の元で培ったものを活かしているんですね。
- 秋元
- はい。みなさんのいいところを真似て、自分なりのパン屋さんを作っていけたらと思っています。

