第6回
ラーメンに欠かせない背脂の役割
ラーメンに欠かせない背脂の役割
ラーメンに油欠かせず、背脂ラーメンに歴史あり
ラーメンの三大要素は「麺」「スープ」「具」とされてきたが、2000年頃からは「四つ目の要素」として「油」が加えられて語られるようになっている。日本で古くからあった麺類「蕎麦」「うどん」などとは異なり、ラーメンは動物系素材も煮込んでスープを作るので、肉や骨から油が浮かんできていた。その油をそのまま使うだけでなく、別に香味油を作っておいて仕上げに加える事で、近年のラーメンには様々なバリエーションがみられるようになってきた。
動物系素材と言えば、基本は「鶏・豚・牛」。鶏油(チーユ)や牛脂(ヘット)を使うラーメンもあるが、骨や肉でも使用頻度が高い豚脂(ラード)が、油でも最も活用されている。中でも、背ロース部分の脂肪から取れる「背脂」の人気が高く、ラーメンの歴史の中でも「背脂」が重要なポイントを占めてきた。
ご当地ラーメンと背脂
国内で185種類が認定されている「ご当地ラーメン」でも、背脂が活用されている例は少なくない。東京発祥の「背脂ラーメン」は、「背脂チャッチャ系」とも称され、スープと麺の上から、背脂を細かく振りかけていて、そのインパクトが見た目と味に表出されている。また、新潟県で誕生した「燕背脂ラーメン」は、出前の際にスープを冷まさない目的で背脂をかける事が考案され、その人気は全国に広がりつつある。また、広島県の「尾道ラーメン」は、ミンチ状の背脂を揚げてラーメンに乗せている事で、独特の食感を生み出している。
また「京都ラーメン」「喜多方ラーメン」の中には、背脂を振りかけて人気を集めるラーメンがある他、「久留米ラーメン」の老舗「大砲ラーメン」では、背脂をラードで揚げた「カリカリ」が人気。
また、「二郎インスパイア」とも呼ばれるガッツリ系ラーメンでも背脂を振りかけていて、「アブラ」のコールで更に背脂を増される事もあり、こってりラーメン好きには欠かせない存在だ。
背脂に種類もあり
一口に「豚背脂」と言っても、豚の部位によって油のキメや融点、食感が異なる3種類があり、それぞれに異なる用途がある。ロース肉の上部に集まる「A脂」は、キメ細かくて甘みが強く、融点が低くて高価。「京都ラーメン」や清湯スープにプラスするなどで効果を発揮する。
背中回りや肩などについた脂は「B脂」と呼ばれ、やや粗さもあってこってりした食感が特徴。「燕背脂ラーメン」や、東京で人気の「背脂チャッチャ系」ラーメンにも適した存在だ。
尻やモモに近い部分についた「C脂」は、キメが粗くて溶けにくく、味にもややクセがある。主に豚骨や豚肉と共に煮込んで、スープをこってりさせる役割に使われている。
背脂をたっぷり振りかける人気店へ
背脂ラーメンの人気店、立川市の「ラーメン あらしん」に伺った。

立川駅南口から徒歩3分ほどのすずらん通り沿いで、2022年12月に開店。「ネオ背脂チャッチャ系」を掲げている。

こちらは醤油味の「ラーメン」。スープに麺と具を入れてから、網で濾したたっぷりの背脂を振りかけたスタイルは、往年の背脂チャッチャ系の人気店「土佐っ子」を思わせるものがある。

今回紹介するのは、ラーメン以上に背脂の存在感を感じられる「油そば」。スープがない油そばだが、ラーメン同様にたっぷりの背脂をチャッチャと振りかけて仕上げている。「油多め」でコールした所、麺やチャーシュー、野菜が見えなくなるほどに真っ白な背脂がかけられた。

麺は太縮れ麺。引き上げた時点で濃い醤油ダレの色に染まっている。

しょっぱさを感じる醤油ダレと、甘さがある背脂がダイレクトにマッチングされ、ラーメンとはひと味違うインパクトが楽しめる。

麺を具や背脂の上に引き上げる「天地返し」を行うと、麺が醤油ダレとしっかり染みている様子が一目で分かり、その味付けでグイグイと麺を啜れる。

こってりした味付けなので、「めし」を小サイズで注文。佐賀県米「さがびより」を使用していて、おしんこもついてくる。

めしに背脂や具を乗せ、自作の「こってりめし」にして最後まで堪能することができる。
背脂と麻婆餡が絡み合う新鋭店へ

次に伺ったのは葛飾区。京成立石駅近くの奥戸街道沿いで2025年6月に開店した「豚そば豚めし 豚魂」だ。

豚骨スープに背脂を振りかけた「豚そば」が基本メニューだが、それ以外にも、背脂を活かしたメニューが並んでいる。

「あんかけ」と「背脂」を合わせたかったというご主人が考案した「背脂麻辣そば」を、「卵黄」トッピングで注文。

真っ赤な麻婆餡が丼にたっぷり入り、背脂がかけられることで、紅白の見た目に卵の黄色がインパクトを出している。

浅草開化楼の太く力強い縮れ麺が、麻婆と背脂を一緒に絡めて引き上げてくれる。

辛く痺れがしっかりと感じられる麻婆餡がたっぷり入っている。

背脂のプルンとした甘さある食感と、辛さと痺れがある麻婆餡を一緒に食べると、互いの味が絡み合って個性的な味を堪能することができる。

麺を食べ終わり、残った麻婆餡と背脂を最後まで楽しむため、ライスも注文。

タレが入った丼に、ライスをまるごとドボン!麻婆餡と背脂がライスと絡んで、これまた後を引く味でペロリと食べることができる。
背脂を主役に据えて、インパクト溢れるラーメンに!
これまでは、ラーメンのアクセントとして使われる事が多かった背脂。スープの原材料費や光熱費が高騰する中、スープのない「油そば」や「まぜそば」とあわせる事で、油脂の持つ旨みやこってり感がインパクトを加えた一杯にする事ができるのではないだろうか。ラーメン店で個性を出すアイテムとして、背脂の役割は今こそ高まっていると考える。
プロフィール:山本剛志さん
1969年東京都生まれ。2000年の「テレビチャンピオンラーメン王選手権」で優勝。
全国10000軒以上のラーメン店を巡り、ブログなどでラーメン情報を発信中。日本ラーメンファンクラブ実行委員会代表委員。

プロフィール:山本剛志さん
1969年東京都生まれ。2000年の「テレビチャンピオンラーメン王選手権」で優勝。
全国10000軒以上のラーメン店を巡り、ブログなどでラーメン情報を発信中。日本ラーメンファンクラブ実行委員会代表委員。

※このページの掲載情報は2026年06月時点のものです